2004/9/11 Studio twl 「ヨージ(モテたい部)ソロライブ」
shou_chong
二日間のソロライブ、初日を拝見。
今回のキーワードは「思い出」だろうか。
虚実入り乱れて、というスタイルは今回も健在。
最初の方で、コンビニのレジでお弁当のほかに思い出も「あっためますか?」ときかれるシーンがあり、これが後々きいてくる。
大雑把に言えば時空をさかのぼり不都合な過去を修正できたら、と願う話。
それも「マンガ初めて物語」風にチープに展開。
高校時代には苦い思い出の多いらしいヨージさん。
中でもクラスメートや先輩と「バックトゥーザフューチャー2」を見に行った日のできごとは最悪だったようだ。
(この映画はいわゆるタイムマシンものだから、ネタのテーマに沿った内容ということになる。)
そんなヨージさんが、ある事件をきっかけにヒーローになる。(むろん、事実ではなく願望の話。)
ヨージさんにはあこがれの対象がいた。
それは高校の先輩とその彼女のセツコさん。
ある日その二人に悲劇が訪れる。
コンビニを出たところをトラックにはねられ、セツコさんは重症を負い、先輩は帰らぬ人となったのだ。
ほんの一瞬タイミングがずれていれば、二人は無事だったのに。
そうだ、過去を修正しよう。
そして最初のコンビニのシーンを再演。
そこで「思い出あっためますか?」という台詞が生きてくる。
これは大筋。
この間にコネタあり、先輩のエピソードあり、セツコさんとそのお父さんの話あり、あれやこれや、場面転換が豊富。
心して見ていないと置いてきぼりになる。
話がスピーディーに展開していくので、楽しく引き込まれるように見てしまうけれど、かなりの頭の体操になっているのではなかろうか。
AのネタはBのネタの伏線でもあったのか、BのネタはCのネタにからんでいたんだ、といったことが次第に明らかになってくる。
パズルを解いたり、ミステリーの謎解きをする感覚に似ているかもしれない。
そして、ライブ終了後には全体の構造がくっきりと見えてきて、なるほどと納得する。
まるで映画を一本見終わったような気分。
しばらくは全体を振り返り、細部を反芻する。
味わい深い、スルメようなライブだ。
個々のネタの中には、もう少し練り上げる時間があれば、と思うものもないではなかったが、なかなか面白い台詞がつまっている。
けれど、敢えてなのかどうか、ヨージさんはキメの台詞を強調すべくメリハリをつけて話すということはしない。
だから爆笑に継ぐ爆笑という展開にはならない。
けれどお客は充分に楽しんでいる。
興味深く聞き入り、時に心の中で笑い、時にクスクス笑い、そして時に大声で笑う。
1時間半のライブならこれもありだと思う。
雑音フェティッシュで拝見した「女子歴史部」という10分前後のネタは大うけで、笑い声も頻繁におきていた。
舵取りはいかようにもできる実力をお持ちということだろう。
友人と観客の笑いについて話したことがある。
友人「始終爆笑しているなんてウソだよね」
私「そうそう。声に出さなくてもおかしいと思うネタもあれば、思わず吹き出すネタもあり、大笑いするネタもあり、反応はいろいろあって当たり前。のべつ爆笑している人は、ほんとは面白さがわかっていないのだと思う」
なんてこと。
爆笑をとることこそが最高だと思い、それが最大の目的になってしまうと、さもしさが目についてかえってお客は笑えないものだ。
たぶん、その点をヨージさんはわかっておいでなのだろう。
ライブ終了後、ほとんどのお客が(ひょっとしたら全員が)アンケート用紙に熱心に記入をし、満足げな顔で帰っていった。
帰り道、すれ違った二十代と思しき数人の男性は、感心したように、そして楽しげにライブの感想を語り合っていた。
「学術的だよね」という言葉が聞こえた。
まだ数は多くないかもしれないけれど、確実に良質のファンがついている。
その意味ではヨージさんは幸せな芸人さんではないかと思う。
top |