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8/30 なかの芸能小劇場 「川柳川柳・高田渡二人会」
8/31 お江戸日本橋亭 「川柳川柳・高田渡二人会」
shou_chong
まず初めにこの会を企画された方にお礼を申し上げたい。
ゲストも含めて最高の組み合わせです。
こんなすばらしい会を開いてくださってどうもありがとう。
めったにない、いやいや、今後あるかどうかもわからない会ですもの、両日行ってまいりましたとも。
○開口一番は、川柳師匠のお弟子さん、川柳つくしさん。
内容は違えど二日とも師匠をネタにした噺。
いろんな意味でネタには事欠かない師匠なのでしょう。
川柳師匠ファン、あるいは落語ファンのお客さんはその点充分ご存知なので、みなさんおおらかに笑って聴いていらっしゃいました。
そして、つくしさん、初日はウクレレをかかえ、遊びに来ただけのはずがギタリストに任命されてしまった鈴々舎わか馬さんと共に、師匠の歌を盛りたてていらっしゃいました。
○お次が、寒空はだかさん。
川柳師匠のことは大先輩として、高田渡さんのことは一ファンとして、敬意を抱いていらっしゃるご様子のはだかさん。
もともと面識がないお二人の間をつなぐにはうってつけの人材と申せましょう。
舞台の上ではまさに幸せそのものという顔をされていました。
ネタの取り合わせは二日間変えて。
初日になさったサッチモのネタはオチが二種類あるのですが、この日は客層に合わせてあがた森魚編。
魔法使いとは別人のサリーちゃんのテーマソングは前奏がとってもカッコイイ。
これは有名な曲の前奏のパクリ、ではなく、はだかさん流に言うならかカバーですね。
玄人女の歌は大うけ。
お終いはお客さんの笑い声でかき消されてしまうのかと思ったほど。
でもちゃんと笑いがしずまるのを見届けてから、締めくくりのドラムのタカトンという音が入りました。
それも控え目に。
このへんの引き加減がたまらない。
音楽家(手にしているのは真空楽器であろうとも)寒空はだかの面目躍如といったところ。
「東京タワーの歌」は聴いた頻度に関わらず、だれもが楽しめる名曲。
愉快な余韻を残しお後お目当てと交代。
○そして、川柳師匠登場。
初日の「涙の円楽船」、興味深く拝聴しました。
こんな裏話があったとは。
最後の替え歌は辛らつだけど仲のよいお友達だからこそ歌える歌でもありますね。
二日目はつくしさんの日記によれば「お客さんは、なんなら自分で演れるほどきいてるだろうが」というお得意のネタでしたが師匠のファン、渡さんのファン、どちらからも大うけでした。
しかも締めくくりの言葉を言い間違えられ、笑いが増幅。
ご自分でも「あれはよかったね。計算したってできるもんじゃないし。今度使おう」といたくお気に召したご様子でした。
噺の後は師匠らしい小話をはさんだ「ラ・マラゲーニャ」。
「歌を歌ったせいで真打昇進が十年遅れた」そうですが、プロになれるくらいうまいんだなあ、これが。
声がいい、声量があるだけでなく、リズム感がすばらしいのです。
失礼ながらあのお年であれだけのリズム感をお持ちの方はめったにいらっしゃらないと思います。
二日目などは噺のほうも歌のネタでしたから余計にそう感じました。
○そして、トリの渡さん。
淡々と飄々と話をされ、歌を歌われます。
もうMCがね、絶品なんです。
名人芸と言いたいけど、ご本人は芸と思って話されているわけではないでしょう。
噺家さんのように師匠について修行したというわけではないから、お人柄なんですよね、これは。
真似しようたってできるものじゃない。
「CD(会場で)売っていますので、よかったら買ってください」と言われた後で、絶妙の間を置いて、「持って帰りたくないんですよ、重いから」なんてことをおっしゃる。
あんまりうけるものだから、初日は川柳師匠が袖で悔しがっていたというのも頷けます。
そして肝心の歌、心に沁みていいですねえ。
伴奏の佐久間順平さんとの息もぴったりで。
渡さんが世に出られた頃、私はうんと子供でした。
大人ってのはみんな大人らしい振る舞いをするものだと思っていた時代です。
渡さんも、渡さんの歌の世界もとても大人に見えました。
そして、徐々に年を重ねるうちに、大人って案外子供じゃないか、と気がついてきた。
で、今改めて渡さんの歌を聴くと、やっぱり大人なんですね。
つまりデビュー当時からある意味完成されていたんだなあ。
子供の頃、渡さんのことを大人と感じたのは、年齢の差によるものではなかったんだってこと。
すごい人だ。
「生活の柄」なんてとても悲惨な状況のはずなのに、聴いているととても心地いいのです。
悲惨な状況の自分を客観的に見ているもう一人の自分がいる。
諦観でもあり余裕でもあり。
決して声高に何かを訴えようとはしない人だ。
粋ですねえ。
アンコールは川柳師匠も加わって「私の青空」。
みなさん手拍子していらっしゃいましたが、私は二日とも静かに聴きほれていました。
そういえば開演前の音楽、だれの選曲なのかなあ。
二日間とも変えて、凝ってましたね。
私の予想では、はだかさんが川柳師匠の希望を第一に尊重しつつ、ご自身の好みも混ぜて選ばれたのではないかと思うんですけどね。
余談ですが、ある雑誌に掲載された写真の中にこんなフレーズを発見。
「かえり道 いつものところ いつものように(健やか運動○○○中学校推進会議)」
青少年の健全育成のための標語でした。
渡さんの「スキンシップ」の歌詞、「いつものように いつもの夜に」のパクリだったら笑えますね。
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