2/7 青山円形劇場「第二回青山寄席 笑福亭鶴瓶落語会」
三谷潤一
たしか、東西落語研鑽会が始まった当初、小朝が鶴瓶のことを
「三席しかできるネタを持ってない」と言ってたような気がする。
芸人さん特有の洒落が入っての発言なのかもしれないが、それが本当だとすると「まだ22席しかできません。発展途上です。」と言った鶴瓶はわずか一年で20席近くを覚えたということになる。
これは大変なことですよ。あんな人気者がそんなに暇なハズはないし、別にテレビで落語を披露する必要もないだろうにもかかわらず、そんなに稽古をしているなんてねぇ。
で、またこれが面白いんだから客にすれば幸福なことです。
「ちりとてちん」つく枝
「ちしゃ医者」晃瓶
「鴻池の犬」鶴瓶
中入り
「厩火事」鶴瓶
つく枝の愛想の良いこと。でも実は笑わせるために相当計算されてるのでは?
晃瓶の声は三枝にそっくりだなぁと思ったら、そればかりが気になってしまった。
「鴻池の犬」で兄弟分にいろいろご馳走を持ってくるくだりで、後ろと隣からぐうぐう鳴ってるお腹の虫が聞こえてきた。
携帯だと腹が立つのに、生理現象は妙におかしい。
空きっ腹にキク噺なんだな。
午後六時開始だから終わってから食事をしようと思っても決して無理はない時間帯だったことだし。
いたく同情。
「厩火事」元々は上方の噺だということが調べてわかった、というマクラに感心。
桃太郎にジャマされることもなく、トボケタやりとりも受けていた。
鶴瓶の凄いところは、噺の途中でも平気で「こないだこんなことがあったんですわ」
とトークを始めて、またすぐ落語に戻れるところ。
「源平盛衰記」のような噺ならともかく「厩火事」で、それも佳境に入ったところで軽々と話題を変えてしまうのには
驚いた。
それが全然ジャマにならない。
落語の途中で演者から解説者に急に変わってあれこれと評してみせるのは家元だが、鶴瓶のそれは「○○と言えばねぇ、こんなことがありまして」といった調子で、「源平」や講談にノリが近い。
こんな落語あんまり記憶にない。
落語の世界と現実の世界との境界線が低いというか軽々と行き来してどっちも面白い。
鶴瓶がそれをやってると何の違和感もないのだが、やっぱり不思議だ。
これは鶴瓶を既にテレビで知っていて、「こんなことがあったんですわ」という現実のトークにこちらが慣れてるからなんだろうか。
でも、そうなら落語の世界に簡単に戻るのが難しくなりそうなもんでしょう?本当にフシギ。
これで「発展途上」となると、一体どんなふうに発展しちゃうんだろう。
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