8/22歌舞伎座 『蘭平物狂』
高野ガラス店主人45歳
ストーリーを説明するのが下手なんで思いっ切り省きます。
刀を見ると豹変する奇病を装って、密かに敵討ちを目論んでいる蘭平が、
大立ち廻りを演じるスペクタクル芝居です。
松禄、初代辰之助と、踊りの名手に受け継がれた出し物。
しかも大望あることを隠しつつ仕える心根、
そこに親子の情愛も絡んでくるんです。
静と動、激情としっとりした思い、
物狂いを匂わせる所作、
メリハリのある立ち廻りに、音吐朗々たる声。
まぁ、三津五郎しかいませんよ。
その後半の立ち廻りは、
三津五郎と捕り手の素晴らしいコンビネーションで成立するんです。
様々にトンボを切り、ハシゴを使ったアクロバチックな殺陣を、
いともやすやすと見せます。
その途中で、三津五郎と絡んだ捕り手が持っていた杖(6尺ほどの棒)が、
先端から3〜40センチのところで折れたんです。
まさに役者達の足元に、鋭利に折れた木が転がっています。
すると、捕り手の一人が、まるで一連の所作でもあるかの如く、
さっと舞台奥に蹴り出しました。
更に持っている方の杖を、邪魔にならない所に転がしました。
今度は後から出てきた捕り手が、
手にした十手を帯に挟み、折れた杖を拾い上げ、
何事もなかったように立ち廻りを続けたんです。
当然と言えば当然なんですが、
芝居の邪魔もせず、勿論主役を煩わせることもなく、
まるで稽古していたかのように振る舞う姿は、見事でした。
「拾ったら舞台が壊れる」とか「放っておくと危ない」と思う暇はないんです。
一瞬の間を空けることもなく、体がすっと動く。
そのセンスを磨くことが修行なんでしょうかねぇ。
役者の性根を見た瞬間でした。
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