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2004/11/27 お江戸上野広小路亭
「第38回 立川談笑月例独演会」
加藤隆也
「シシカバブ問答」
「代書屋」
中入り
「文七元結」
立川談笑が11月19日の「真打トライアル・完結」で、目出度く立川談志師匠より「真打昇格」をもぎ取っての最初の独演会だ。
「もしかしたら満員になるかも」とは思っていたが、本当に満員になった。この小屋が満員になったのを初めて見た。
We Will Rock You の出囃子で幕が開くと舞台には「祝立川談笑真打昇進」の寄席文字が貼られている。
右上角が剥がれかかっているのが実に「らしい」いい味わい(笑)。
満面の笑みを浮かべて談笑登場。万雷の拍手!
まずは深々と礼をして「ありがとうございます」。
客席から「剥がれそうになっている…」と声がかかり「そうそう、これが私のイマの危うさを現している」と笑わせ、改めて真打ち昇進の礼を申し述べて万雷の拍手再び。
相変わらず好調に飛ばす枕。
「最近、おめでたかった39歳の人が3人いる。談慶さんの真打昇進、自分の昇進、都庁の黒田さん…」とか。他は書けないし(笑)。
一席目は「本寸法な、江戸情緒豊かな…場所はバグダッドの郊外。シシカバブ屋で働くハッサン。親方はアブドゥル…」。蒟蒻問答かぁ…?!
古モスクで寺守をするハッサン。本当にいい壊れ具合。いきなり飛ばす談笑。
二席目は「代書屋」。場所を自分の生まれたらしい「東京市城東区砂町」にしてリアルに、こってり、じっくりと。そして意外なブラックなオチ。本領発揮です。
中入り後の「文七元結」は初めて高座に掛けるらしい。細かく談笑らしさを盛り込みつつも大きな噺と真っ向から取り組む。巧い。実にリアルで場面場面が目の前に浮かんでくる。涙が出ましたよ。この噺で涙が出たのは初めてで、まさか談笑さんに泣かされるとは…。
最後に談笑が珍しく自分の落語について語った。以下要旨。
行きたい方向は、昔からある芸能としての連続性を断たずに、どう言う風に自分たちが楽しむのか。
必ずしも昔をありがたがるノスタルジーではなくて、完全に今の時代として続いてきた芸能を存分に楽しもうじゃないかと。
昔の名人を知っている世代の人とはひょっとしたら共感できないかも知れない。私より若い世代の人たちとも共感できないかも知れない。世代論的な落語として共感できるものをやっていきたい。
悔しい気もするが、いわゆる本寸法と言うものがあり、何でそう言うものをやっている方がいいのか。なんで落語と言うものはそんなに狭くなくてはいけないんだ。
例えば芝居の世界だったらいろんなジャンルがある。どれが正しい、俺たちが正しいなんて誰も言っていない。昔から続いているからと言って歌舞伎が芝居の王様だと言っている人はいない。
ところが落語になると「これが本寸法」だとか「そんな古臭いのでやっていてはいけない。新しいものが正しい」とか。いいじゃないですか、みんなあってみんな楽しい。みんな好きな所に行けばいいんですよ。
ほかを駆逐する必要は無いじゃないか。ああ言うのもあるし、こう言うのもあるし、素人がやったって落語は落語だ…と。ズボーンと(落語の世界に)風穴を開けて行きたいと思います。今後とも粉骨砕身がんばります。
「リアル」な落語を目指す談笑。これからがますます楽しみです。
次回の独演会は12月25日(土)17時から「お江戸上野広小路亭」にて。
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