2004/11/12 林家彦いち本『楽写』
高野ガラス店主人45歳
彦いちさんの『楽写』に、三木助の写真が数枚あるんです。
これがみんなステキなんですよ。
遊び人の若旦那っていう風情と、芸人の顔がないまぜになっている。
カッコイイんだなぁ。
最後に聞いたのが『黄金餅』。
下谷から麻布までの道すがらを、高速道路のインターチェンジでやったんです。
いかにも「都会の道は任せて」と言わんばかり。
三木助らしいなぁと思いました。
僕は彼の死に至る物語を知りません。
先代である父の面差しも格好良かった。
例のあんつる贔屓の話が尾鰭付きで伝わっているけど、そこんとこも分からない。
でも、この三木助は、僕等の世代の三木助になって欲しかった。
彦いちさんのカメラに写った三木助を見るにつけ、溜息と「もったいない!」という言葉ばかりが浮かびます。
何があったか知らないけど、何があったって「芸人」はへっちゃらであって欲しい。
へまをしても「てへっ」とか言って、笑って誤魔化して平気な顔をして欲しい。
嫌な性格だろうと、金の亡者だろうと、「あぁ、こいつ芸人じゃなかったら、どうなっちゃってたんだろ?」
そんな人がいても良いと思います。
若手歌舞伎役者で尾上辰之助ってのがいます。
海老蔵や菊之助と同世代の人です。
彼のお父さんの先代辰之助も、早くに死んじゃったんです。
踊りが上手くて、ですから殺陣も所作も綺麗だったけど、確かお酒に負けちゃって亡くなったんです。
僕が見ていた頃は、顔のとんがった、役者らしくない人だなぁって思ってたけど、この頃先代辰之助の写真を見ると、とっても鯔背な江戸ッ子に感じるんです。
「この役、辰之助で見たい!」と思うことがあるんです。
その頃は僕に見る目がなかった。
でも、もう遅いんですね。
リアルタイムでは気に掛けていなかったのに、後になってじわじわやって来るこの気持ちって、何なのでしょう?
彦いちさんの写真集は、色んなことを考えさせてくれます。
追伸:この本に出てくる円蔵師匠も良いです!
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