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11/1 トリイホール「TORII寄席・新作落語大会」
ミマン
単独で行ってきました。
久々のトリイホール。
ハコ的にも音的にも妙に落ち着きます。
よく計算されて作られた「会場」。
聴きやすい環境というのは、芸以前に一つのポイントですね。
桂まん我「十徳」。前座噺だけど初。聴けてよかった。
桂吉弥「卵を買いに」。くまざわさん作の新作落語。
昔ながらの商店街と新大手スーパーの時代の流れの確執を嫁姑の関係にもなぞらえながら描く。
こういう着眼点は女性ならでは?
おばちゃん独特ワールドなので、あやめさんが演ったらピッタリはまるなぁと思いながら聴きました。
最後のトークで、この噺は著作『落語的生活ことはじめ_大阪下町・昭和十年体験記』にも書いた、
実体験を基に作ったというエピソードが聞けました。
笑福亭三喬「月にむら雲」
「月にむら雲」というのは盗人が闇の質屋に質入れする際の合い言葉。
古典の雰囲気がまじった新作落語。小佐田氏作。後半は三喬がアレンジしたのだそう。
脚本が落語作家の元を離れ、噺家によって味付けが変化することは、多々あるそうです。
そんないい関係を垣間見たような気がしました。まさに三喬と小佐田さんのコラボ、
両者のバランスが50+50といった、落ち着いて聴けるリズム、内容。
寺に泥棒に入ったはいいものの、千手観音像の手が取れて998観音像、
十一面観音像の面が欠けて、七面観音像、
七福神の一人が欠けて六福神、等々細部で笑わせてくれます。
桂小春団治は、毎年ロシア、フィンランドなど落語巡業に行ってるそうで、
その際の大使館クラスとの会話のレベルがきまずい、
インターネット・ワープロの普及で漢字を忘れても即変換してくれる便利さ、
日本人だと漢字を忘れても平仮名でカバーできるが、中国人が文字をド忘れしたらどう対処しているのだろう?また中国の電報のシステムの話などのマクラから「失恋飯店」。
日中合作の大河映画制作で、電映公司の王(ワン)監督が日本に打ち合わせでやって来た際の日本側の通訳とのズレのある滑稽なやりとりを描いた噺。
小春団治作の新作落語。しかも17年前の作品だそう。
新鮮だったのは、中国語の会話を日本語読みの漢字で通したこと。
例えば「我無事日本到着也、日本高層建築多在、我只驚愕也」
そうかと思えば、「高速道路突入也、阿波座渋滞4キロ也」
はたまたキタ新地のスナックに連れていかれ、あるホステスに一目惚れし、
「我一目惚れ也、頭脳空白、海綿体充血(ここで個人的に爆笑)、求婚決意」
ウィンドーショッピングは商店装飾物見学。
頭の中で漢字が踊る踊る、おまけにイメージも拡がる、で楽しめました。
*小春団治、くまざわさん、小佐田氏トークで三者三様の噺の作り方*
小佐田氏:噺家が喋ってる様な早いテンポで書く。〆切ギリギリは性格的にできない。
余裕がないと胃が痛くなる・・・。執筆しながら(誰々が演じてる様を想像して)笑うことも多々あるそう。
くまざわさん:「てにをは」を考えてじっくり考えて書くので〆切も遅い。
小春団治:自分で自分を騙す。原稿に水増しする。改行に改行を重ね、さも多く書いたように思いこませる。当日ギリギリでネタ下ろししても誰も知らない噺なので騙しがきく。米朝師も、新作は教える責任が無いのでリラックスして(楽しんで)弟子の稽古を見ていたそうです。
ちなみに福笑師、三枝はおさだ派。(夏休みの宿題をさっさと済ませる優等生タイプ?)
逆は小春団治、仁智だそう。
今回は古典と新作の位置づけについての意見が収穫。
小春団治「失恋飯店」で苦労したのは同音異義語は漢字にすると意味が混同するので整理するのが難しかった、と。
それに答え、小佐田氏「ダジャレの世界はまさしく同音異義語で成り立っているので逆をいってる」と。深いです。
両落語作家には悪いけど、今回の新作落語バトル、勝者は小春団治かも。
軽い印象は変わらないままでも(謎)海外公演への熱意、古典、新作問わずの
チャレンジャーの意気込みを垣間見られ、好印象でした。
この会の後、私の私生活にも変化が起こりました。
気持ちをいったん脳の中で漢字に変換し言葉に発する・・・というマイブーム。
たとえば・・・
我受信、山本氏より携帯電信文。
「我、現在姫路及び山奥似て似顔絵描き的仕事激務中。DJ皿回し我見る、今一退屈也。」
我返信也。「姫路山中似て似顔絵及び DJ皿回し、同環境以て異色作業、或る意味真楽しい事也」
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