06/12/22 紀伊國屋ホール グリング「虹」
岡町高弥
青木豪と「グリング」がまた素敵な芝居を見せてくれた。
今年は文学座、シスカンパニーと上質な作品を外部公演に提供し続けた青木豪。
待望のグリング本公演「虹」も期待を裏切らなかった。
舞台は田舎の教会。「ルルド」という奇跡の泉が枯れたある日、タバコの不始末から起こったぼや騒ぎから幕が開く。
愛人の女性に子供が生まれ離婚劇へと発展していく夫婦(中野英樹と高橋理恵子)。
夫がエイズキャリアだとわかってから夫婦の絆が生れる教会神父の妹夫婦(杉山文雄と萩原利映)
自殺ではなく事故で死んだのだと母親に「真実」を告げに来る神父の兄(鈴木歩己)。
すべてを優しく見守る神父(東憲司好演)とおろおろする母親(井手みな子)
登場人物全員に青木豪の優しい視線が注がれている。
どんな絶望的状況にあっても「虹」は見えてくるという作者の願いにも似た切実な心情が舞台全体を包んでいた。
ややセンチメンタルすぎるという批判もあろうが、慈愛に満ちた舞台も必要だという作者の意図が痛いほど伝わってきた。
06年は青木豪の年であったといっても過言ではない。
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