06/12/17 上野鈴本演芸場下席
高野ガラス店
昨日、鈴本へ行って来たんです。
夜の部のトリは志ん輔さんでした。
文七元結。
僕は人情噺はちょっと苦手です。
笑って笑ってちょん、
そんなのが好きだし、
演出過剰や喋り過ぎも好きじゃないし、
第一、こう見えて涙腺が丈夫じゃないんで、
くそ〜と思いながら目頭を熱くするのが悔しいんで。
昨日の文七元結は応えました。
吾妻橋の上の文七と長兵衛のやりとりです。
「お前が死ぬっていうからやるんだ!」
と金を投げつける長兵衛さんの心持ちは、
ただ江戸っ子だからとかじゃないですね。
江戸は火事早い、
疫病も流行ったし、
そうじゃなくても平均寿命は短い。
もう武士だってろくに切腹しない太平の世です。
そこで命を絶とうという若者、
恩ある主に迷惑をかけたという理由だけで、です。
死んじゃいけない!
だらしのない親のために娘が身を売って拵えた金、
でもあいつは死ぬわけじゃない、
一生浮かばれないかも知れないけど。
でもお前は死ぬという。
娘だってきっとこの場にいたら俺と同じ事をする。
かかあだってそうするかも知れない。
何故だ?
人間だから。
どんなに苦しくても、
命を絶ってはいけない。
長兵衛さんはただそれだけなんですね。
死にたくないのに死んでいく人がこんなにいるのに、
ダメだよ〜〜!
志ん輔さんの長兵衛は凄かった。
あれは文七だけに言ってるんじゃない。
僕はそう感じました。
下らなく、めめしい世の中ですよ。
でもそれをどう生きるかは本人次第なんだ。
掃きだめにだって花は咲く。
お前は世界中の不幸を背負ったみたいな顔しているけど、
そんなのは不幸に失礼だ!
長兵衛さんも志ん輔も叫びました。
これで今年の落語の聞き納めでもいいや。
僕はそう思いました。
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