06/10/20 Star Pine’s Cafe
寒空はだかソロライブ「Tower of吉祥Terror…冥王井の頭星…」
shou_chong
毎回ソロライブには凝ったタイトルをつけるはだかさん。
前半は、Tower of Power(バンド名)をもじり、さらに吉祥寺の寺を訓読みしたというあわせ技。(これは、お知り合いのアイディアだとか。)
後半は冥王星と京王井の頭線をかけたしゃれ。
などということを解説するのは、熱々のゆでたて餃子の皮をはぎ、中の具を、ひき肉と、しいたけと、白菜と、ネギと、ニラに分解してからお出しするようなもの。
料理のおいしさ台無し。=ネタの面白さ台無し。
お客はご当人が提供してくださるものを、丸ごと受け止めればよいのです。
そのおいしさ(面白さ)を味わえるか否かは、個々のお客次第なのですから。
それを一観客がレポートの名を借りて得意げにネタの解説をするなどは、まことにおこがましくも愚かしい行為、野暮の骨頂、「寝床」の旦那であります。
さりとて、各ネタの中身には一切触れず、タイトルや感想だけ述べるのも、目の前にいる相手にメニューだけ見せ、「この料理は美味だった」と言うようなもの、不親切を通り越して、ほぼ嫌がらせに近い行為でありましょう。
ならば、どんな文章を書けばよいのか?
と、悩み、結局どっちつかずの中途半端なレポートになるのがいつものことです。
が、今回は、「万里さん急用につきはだかさんソロライブ欠席」とお聞きしましたので、少しでも行った気分になっていただくべく、野暮を承知で「寝床の旦那」でいかせていただきます。
ただし、お酒も、おいしいお食事も、お菓子も出ませんからね。
ただの拷問と思われる方もいらっしゃると思います。
ということを、あらかじめおことわりしておきます。
どうも申し訳ありません!
最初から謝っておきます。
そう、はだかさんのライブも、謝罪で始まりました。
「明日から日本シリーズも始まろうという忙しい時に、わざわざお越しいただいて…どうも申し訳ありませんでした!」
と、最近毎日のように目にする誠意が感じられないおわびの光景を再現。
「今は、おわびビジネスが狙い目」
「そのうち、広告代理店が目をつける」
そうです。
*厳密には、おわびをされる前、ご自身の衣装(身ごろは赤、襟は青のベルベットのジャケット、黒い蝶ネクタイ、ワイシャツ、黒のパンツ)について、「一つ一つはおかしくないけれど、全体で見ると変」「間違い探しのよう」と自らダメだしされたのが、最初のお言葉でした。*
以下、思い出せたネタのうち、説明可能なもののみ羅列。
異常に長いので、お暇な時に、休み休みお読みください。
なお極力ネタの本筋は避けております。
私がいかに「寝床の旦那」でも、それくらいの配慮はいたします。
・「♪お客と俺との間には深くて暗い川がある…」
お客さんの反応がいまひとつのときに歌われる。
「みなさん、(櫂でこいで)こちら側に来てください」
・「やきいもロックンロール」
動きが「反対俥みたい」なやきいも屋。
・「十五の夜」を「十九の春」のメロディで歌う
「♪盗んだバイクで走り出す」という過激な尾崎の歌も、のどかな琉球的旋律で骨抜きに。
(「琉球音階」と書きたかったのですが、厳密には違うらしいので、「琉球的旋律」などと曖昧な表現になってしまいました。)
・槙原敬之の話題
(盗作疑惑のニュースはみなさんご存知のようで)
「あ、これは意外と浸透していましたね」と嬉しそうなはだかさん。
「思いもかけないような歌詞を書くので尊敬している。
(槙原さんの)曲作りは、物質に頼ったり、人に頼ったり」
「物質」という表現がいいですねえ。
・「♪北からのぼったお日さまが南にしず〜む〜 独裁一家だ、テ〜ポドンドン」
原曲を忠実に再現した歌だそうです。
トランペットにおわんをかぶせる演奏法の音まで。
・「闘牛士だよ、おっかさん」
*これは時間的にも空間的にも非常に壮大なお話です。
意に反して、けっこう詳しく書いてしまいましたので、ネタバレがいやな方はお読みならないようお勧めします。*
悲しい歌シリーズの中の一つ。
戦国時代、父と死に別れ、母と生き別れ、男手一つで僕を育ててくれた兄貴が、三年前の今日、亡くなるまでの顛末。
兄弟が住むのは長野の貧しい村。そこに野武士が米を盗みにやってくる。
「七人の侍」を数分のダイジェストで。
「今、やったような話ですよ。
3時間以上の作品を数分でわかってよかったですね」
兄貴は生き別れた母親を探すため、天正遣欧使節団に加わり出国。
「シャンプーハットのような襟」で有名な使節団のメンバーは、
「伊藤マンショ、千々石ミゲル、田口ランディ、滝川クリステル(あるいは山本モナだったかも)」
「戦国時代の当時の流行が、辻切り、辻駕籠、つじあやの」
で、兄貴は辻闘牛士になってスペインに渡る。
「闘牛士、(すなわち)ままどおる、いや、これはおいしいお菓子の名前」
http://www.chuokai-fukushima.or.jp/ksk/mamador/index.html
正しくはマタドール。
*ままどおる、以前は東武デパート池袋店にも売っていましたが、今、都内で常時買えるのは銀座店だけのようです。*
片手にはカスタネット、片手にはムームーを持ってスペインに渡った兄貴。
「フラガール」を見てしまったので。
「『セビリヤの理髪師』で有名なスペイン。
『フィガロの結婚』も。
あ、これはイタリアですか?
私はスペインとイタリアの区別がつきません。
鳥取と島根の区別がつかないのと同じ」
闘牛場なら多くの人の目に触れるから、母親探しに最適と考えた兄貴。
「兄貴は新婚三ヶ月だったんです。
指パッチンのカスタネットを操る、ポール・カルメン・マキという情熱的なお嫁さんがいました」
闘牛の最中、母親の姿を見た、と思った瞬間、その隙を牛につかれてあえない最期をとげる兄貴。
兄貴を倒した牛はシルクロードを通り、海を渡り、長野までやってきて、ついには野麦峠まで行き着く。
その間、シルクロードのテーマミュージック、狩人の「あずさ2号」の替え歌で、
(はだかさん的に言えば「パクリではなくてカバー」?)状況説明。
結局、兄貴は闘牛士ではなく狩人だったのか?
牛は最後に野麦峠を臨み、「ああ、飛騨が見える」とつぶやく。
「飛騨牛だったんですね」
いつの間にか、牛は女工哀史の主人公に。
「主演は大竹しのぶ」だそうです。
☆ゲスト大谷氏
一部の終わりにゲストの大谷氏さん登場。
(はだかさんのどのネタの後だったのか、までは覚えておりませんので、適当にレポートの真ん中あたりに挟んでみました。
いい加減ですみません。)
はだかさんもサイトの10/8の日記に書いていらっしゃいますが、私もとうじ魔とうじさんの会で初めて拝見した方です。
その時、私の心は、楳図かずお先生描くところのまことちゃんが形づくるところの指の形のごとく、「ぐわしっ!」とつかまれてしまいました。
説明不能のおもしろさ!
脳みその痒い部分をかいてもらっているような快感!
「ごめんねキャプテン」なんて、おかしくて、おかしくて、もうたまらなく好きです。
万人向きではないと思いますが。
心に沁みる名曲もありますよ。
CDを買いそびれたのが悔やまれます。
・「登る阿呆に見る阿呆」もしくは「やま男」あるいは「登山家の宿」
悲しい歌シリーズの一つ。
「浮気も山も登りつめたら命がけ」
・「恋愛戦士レインボーズ」
桃ボーズは色気のある女性。
青江美奈の「伊勢崎町ブルース」で色気を表現するところが、なつかしくておかしい。
・ショートコントー!
と片手を挙げ表明。
「なんか、楽しいですね」
普段、コントなどしないから、初めての体験で言葉通り楽しそうなはだかさん。
が、状況説明をしてしまい、「これではコントではない」と自分にダメだし。
・金融業ネタ
アコム、アイフル、ほのぼのレイク、丸井君の歌など。
曙が取り立てている側にしか見えない、ほのぼのレイクのCMについてつっこみ。
*「ほのぼの○○プ」というしゃれを過去に一度だけ聞いたことがありますが、笑っていたのは私だけでした。
「ほのぼの」と「○○プ」というそれぞれの言葉が持つ意味のギャップが異常におかしい、そして、暴力的取立ての罪深さは○○プ同然、という批判的意味も込められた秀逸なしゃれだと思うのですけどね。素通りするのは、なんとももったいない。*
ほのぼのレイクの親会社はGE。
イメージとしては、「アイラブルーシー」や「奥様は魔女」の中に出てくる、でっかい冷蔵庫を作っている会社。
エジソンが元を作った会社。
「あの電球を発明したエジソン。電球は三大発明の一つですね。
あ、嘘ですよ」
ほんとうの三大発明は
「羅針盤、活版印刷…そしてプッチンプリン」
http://www.hmv.co.jp/product/detail.asp?sku=536043
CMは13
「こんな発明をする人になりたかった」そうです。
・世界の終わりとハードボイルドディズニーランド
従来のディズニーランドとは違う楽しみ方のできる場所。
「でもチキルームはつまらないまま」
「局部を切り取られるアベ・サダ・ホテル(≒アンバサダーホテル)」もあるらしい。
*はだかさん描くディズニーランドは、ホラー仕立ての、バタ臭い雰囲気漂う、不謹慎な世界。
一方、ヨージさん描くディズニーランドは、土浦にあるのでもっと日本的。
http://marishiro.cool.ne.jp/kaguyahime/ground/526-550/ground-528.html
しかし、二人とも同じしゃれがネタの中に入っています。
具体的に、どんなしゃれかは明かしませんよ。私はそこまでお人よしではありません。
そして、どちらも、子供の夢とは対極にある世界、というところが素敵です。
そのあたりが、お二人のファンである私には非常に興味深いところです。*
・車だん吉のクローンが100。
本人と合わせて101。
「101匹だんちゃん大行進」
「体にもぶちがある」
と、うっかりすると聞き漏らすくらいの小声で、早口に付け加えるはだかさん。
・「あると思え」のネタ
*個人的には「だくだく」的味わいを感じます。
意味不明な人は、素通りしてください。*
・コーヒー三部作
この三曲が聴けただけでも今回のライブに行った甲斐がありました!
「カヤバコーヒー讃歌or賛歌or行進曲」
(ご本人のサイト、10/10付の日記に説明があります。)
曲作りをするときには、タイトルはつけないはだかさん。
レコーディングするときに初めてタイトルをつけるので、普段のステージでは正式名称を言わないことが多いのだとか。
だから、この曲もまだはっきりとしたタイトルは決まっていないのだそうです。
「笑いのない曲も作るけれど、普段舞台で披露することはありません。
でも、たまには(披露しても)いいでしょう」
と、真面目に話しているご自身に、少し照れているような風情でした。
*この歌はお世辞抜きで(今まで、レポートにお世辞を書いたことなど一度もないけれど)、名曲です。
「ピアノ伴奏が似合う曲」」ということなら、お友達の杉浦哲郎さんにお願いして、ぜひCD化してほしいものです。*
「コーヒールンバ」
偉いお坊さんは、怪僧ラスプーチンのような破戒僧だった。
その魔力で、コーヒーの雨をふらせる。
これがほんとの怒涛のコーヒー。≒ドトールコーヒー
「ロンリネスコーヒーキャンディ」
「ライオネスコーヒーキャンディ」
http://www.hmv.co.jp/product/detail.asp?sku=73885
の替え歌。(5番ですよ。)
「♪すぼまる味は孤独」なんて歌詞がたまりません。
*はだかさんは孤高の人ですから、ある意味、この曲ははだかさんの裏テーマソングみたいなものですね。
ライオネスコーヒーキャンディは今でも袋入りで売っていますが、かつてはタータンチェック模様の缶入りでした。それも白粉などを入れるコンパクト型の缶。
佐久間のドロップより、おしゃれで、大人っぽくて、ちょっと高級感がある存在。
当時子供だった私には、たまに味わえる小さな幸せ、というキャンディでした。
はだかさんの選曲のセンスに痺れます。*
・「俺は殺し屋デンジャラス」
友人Sさんは初めてはだかさんのCDを手に入れた当時(実は私がプレゼントしたのです)、通勤途中にこの曲を聴き、電車の中で聴くには向かない曲だと思ったとか。
頭の中でこの曲がぐるぐる回っていたらしい。
・「東京タワーの歌」
見せかけのエンディングの後、いったんステージから引っ込む、という儀式は割愛。
そのままとどまり、ご本人自らアンコール曲と宣言。
「お客さんがアンコールの手拍子をする手間を省いた」のだそうです。
「みなさん、ほとんどの方がご存知ですから、もう聞かなくてもいいでしょう。
知らない人だけ、CDを聞けばいいでしょう。
なんて、すみません。そんなことはありませんよ。
東京ボーイズなら『なぞかけ問答』、
玉川カルテットなら『♪金もいらなきゃ女もいらぬ、わたしゃも少し背がほしい』、
横山ホットブラザーズなら『お〜ま〜え〜は〜、ア〜ホ〜か〜』、
を聞かなければ、終われないのと同じ。
『東京タワーの歌』も聞かないと(ライブが)終われない。」
1番はそのまま、あとはTower of 吉祥Terror…の歌詞で、と説明。
歌う前に「あまり盛り上げないように」とお客さんに釘をさすはだかさん。
そしたら、ほんとにあまり盛り上がらなかったので、1番から歌いなおしていらっしゃいました。(と記憶しております。)
Tower of 吉祥Terror…を「悪夢そのもののような歌詞」とコメント。
内田百フの作品が好きなはだかさん。
おもしろい話もあれば、おかしな話もあるけれど、この夏、おかしな話を寝る前に読んでいたら、悪夢にうなされたそうです。
「私の芸は人に説明できない。
真空ギターを持って歌っている、と言ってもわかってもらえない。
エアギターですらないのだから。
エアギターなら、バックに音が流れるけれど、真空ギターは、演奏も口でじゃんじゃか言いながら歌うのだから」
などと、本当の終演近くにご本人自らおっしゃっていました。
確かに、はだかさんの芸は既存のジャンルにはまったく収まらないので、宣伝しづらいですね。
言葉で説明するのは難しいですが、DMレボリューション(無駄なところに力の入ったダイレクトメールをお送りするDMクラブ=ご本人の表現)のハガキは布教活動にかなり有効です。
逆に言えば、このハガキで心動かされないような人は、ライブに誘っても無駄だと思います。
・本当のエンディング=おわび、で終了
■全体的感想
はだかさんのネタは本筋もおもしろいのですが、もののついでのようにポロっと口にされる脇の話、ネタがすこぶるおもしろいと思います。
道で言えば、本筋は文字通りの、本道、大通り、表通り。
人通りが多い賑やかな通りです。
わかりやすくて迷子になる心配もまずない。
脇の話、ネタは、まさに脇道、小道、裏通りです。
人気(ひとけ)はなく、ひっそりとしています。
入り組んでいて、迷いそうになります。
でも、なかなか味わいがあって、思わぬところに素敵なお店があったりして、
発見の楽しみがある通りです。
しかし、これは自力で歩いて行かなければなりません。
なにしろ人気のない道なのですから。
それだけに、よいお店(ネタ)を見つけた時の喜びは大きい。
つまり、本筋は比較的多くのお客さんにわかるように作られ、脇の話、ネタは、もともと万人向きには作られていない。
はだかさんだけを追いかけていてもわからないような、他の芸人さんや、事象に関するものが多いです。
「もののついでのようにポロっと」と書きましたが、それはあくまでも、そう装っているだけで、本当は細心の注意を払った上で、小声で話されているのです。
心なしか、はだかさん、脇の話、ネタをされている時のお顔が、生き生きと嬉しそうなのですよね。
はだかさんは、複数の出演者がいる演芸の会などでは、手堅く本筋のネタを中心になさり、ソロライブのようにいろんな意味で余裕がある会では、脇の話、ネタも多くされ、一部のお客さん、そしてご本人の遊び心も満足させているのではないかしら、なんて思います。
そして、ステージ全体を見て思うのは、はだかさんは、過度にわかりやすさを目指さない、お客さんに阿らない、必要以上に密な関係を望まない芸人さんだということです。
お客さんとの間に一定のほどよい距離を保とうとなさっている。
そこが大人っぽくてかっこいいなあと思います。
はだかさんの芸人さんとしての美学ですね。
しかし、それがおわかりにならないお客さんも時にいらして、(心理的な意味で)ベタベタと近づき、勝手にステージに参加しようとなさるので、とっても残念です。
(今回のライブでの話ではありません。)
はだかさんファンなら、もっとはだかさんのよさをわかってくださいね。
とお願いして、私の「寝床の旦那」レポートを終わらせていただきます。
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