05/11/04 矢野陽子喜劇ショップVOL.?シアターX(カイ)提携公演
「ワルルル+(プラス)」報告
岡町高弥
11月4日、矢野陽子の一人芝居が見たくて両国シアターXへ。
「ワルルル」とは韓国語で「どんがらがしゃ」という意味だ。
文字通り、95年の阪神大震災で「ワルルル」となってしまったハルモニ(おばあさん)の苦難に満ちた生涯をハルモニが憑依したとしか言いようのない矢野陽子が完璧に演じてみせた。
舞台には大きな白菜と包丁が置いてある。
キムチ作りに励むかたわら自身の半生を振り返る。
戦前、夫を追いかけて着のみ着のまま釜山から日本にやってきたこと。夫とともに江東区から神戸と牛の世話に明け暮れる毎日。子どもが3人出来るも空襲で被災したこと。
戦後、闇市でホルモン焼で荒稼ぎし、神戸長田の地場産業である長靴の製造を請け負い、ミシン一つで子どもを3人育てあげたこと。50歳を過ぎて夫が亡くなったこと。80歳を過ぎてやっとのんびり出来ると思ったら、阪神大地震に被災する。
地震ですべてご破算になっても、立ち直り勉学に目覚め80歳を過ぎて学校に通い始める。
自分の人生は間違っていなかった、この国(日本)に骨を埋めようと決意する姿が胸をうつ。
この国はそんなにいい国なのかと思わないでもないが、あえて苦しいことを語らず、お涙頂戴に陥らず、ひたすら前向きに生き抜くハルモニ。
太鼓やギターを片手にヨイトマケの唄や念仏ブギを歌い見事な楽士をつとめた趙博(チョウバク)の存在も忘れがたい。
明るく振舞えば振舞うほど想像を超えた哀しみがあったとみてとれる。
矢野陽子の存在が在日朝鮮人の艱難辛苦を雄弁に物語る。
多くの日本人が見なければならない作品である。
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