05/11/10(木) 神楽坂・IWATO
立川志らく劇団 下町ダニーローズ第5回公演 向田邦子原作「あ・うん」
本加奈子
主な出演者
水田仙吉(柳家一琴) 門倉修造(立川志らく)
水田たみ(小林美江) 水田さと子(酒井莉加)
石川義彦(林家彦いち) 作造(立川談四楼)etc.
落語&向田邦子大好きな私としては、この組み合わせは見逃せません。
しかも彦いちさんがお芝居に出られるとのことで、勇んで神楽坂へ行きました。
何とチケットは既に売り切れだそうです。
劇場内には人がいっぱい。その中に花禄さんのお顔も見えます。
久々に床に座るほど小さな劇場、しかも1番前ど真ん中。
私は5センチの距離で、演技を見られたことに興奮していたのですが、年配のお客様が多くて、辛かったのではないでしょうか。
作品によっては、もう少し大きな劇場をお薦めしたいですね。
物語は皆さんご存じの「あ・うん」。
門倉と仙吉&たみ夫妻の心地よい三角関係の物語です。
異論反論ございましょうが、相当よかったです。
皆さん、お役が適材適所なんです。
東京ヴォードビルショーの小林さん、まさにたみさんでした。
高慢なところが1つもなくて、でもプライドはある強い女性。
吉村実子さんが演じられたドラマで見たときから、私の憧れの女性像です。
門倉じゃないけど「いい!」と思わず言いたくなります。
志らくさんののらーりくらりな門倉、ぴったりでした。
一琴さん、頑固おやじ。若いのに貫禄充分です。
テレビの印象があまりに強いので(杉浦直樹さん、フランキー堺さん)、どうしてもダブってしまうところは多々あります。
だけどそれも古典落語を沢山の噺家さんが演じるのを楽しむように、見事な脚本があると、役者さん達の「味」を楽しめるステップに上るわけですね。
ということは、適材適所、と言うのは違うのかも。
役者さん自身が持つ「材」を与えられた「所」で、どう適切にしかも快適に過ごさせてるんだろう。
そこを楽しむのが、今回の「あ・うん」のキモだと思いました。
そして、彦いちさんが演じられた石川義彦。
さと子の許されぬ恋人、「あ・うん」のなかで一番かっこいいキャラ。
戦時中に笑いを提供したとして逮捕される噺家さんとして登場です。
出てきたときは「彦いちさんが噺家の役で演技してる」のが、いかにも照れくさそうで、とても可笑しい。
でも最後、逮捕された彼は招集され戦線に送られてしまいます。
軍服を着た彼の元にさと子は走ります、たみは言います、
「あの子にとって今夜が一生…」くー!!
その前に笑わせてくれたから、涙止まらなかったです。
彦いちさん、おいしすぎます。そして軍服が似合いすぎます。
ここで私は志らくさんが演出されてる意義を、強く感じたわけです。
笑えるって素晴らしいことだよなあ、と。
最後にご挨拶する志らくさんの目がうるうるしていて、高座とは違う役者・演出家のお姿、若々しくて愛らしかったっす。
今度も向田作品やってくれないかな。
一琴さん、寺内貫太郎なんてぴったりだと思いました。
また好きな劇団が1つ、増えました。
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