07/4/9.月 国立劇場 劇団若獅子「国定忠治」
岡町高弥
芝居を見るのにこれほど心ときめいたのはいつ以来だろうか。
昨年から観たい観たいと思い続けてきた劇団若獅子「国定忠治」を4月9日、国立劇場でようやく観ることができた。
結成20周年記念公演にふさわしい見事な出来栄えだった。
理由は三つある。
まず、第一は42年ぶりの通し上演であったこと。
芝居の本質、特に作り手の世界観は通しでなければ見えてこないといわれている。
文楽、歌舞伎以外で通し上演を見る機会が少ない中での今回の通し上演は壮挙といってもよい。
「赤城の山も今宵をかぎり」が有名だが、いたずらに「国定忠治」を英雄視することなく博徒の哀れな末路まできっちり描かれている。
なるほど作者、行友李風の厳しい倫理観が反映されている。
第二は豪華な配役だ。
今年、91歳になる清水彰の御用聞き惣次役の堂々とした演技、山形屋籘造を演じた緒方拳の軽妙さ、朝丘雪路の迫力など芝居を大いに盛り上げた。
それに応えるかのように忠治役の笠原章をはじめ桂広行、南條瑞江、東大路昌弘、森田優一、中川歩といった若獅子の面々が最高の演技を見せてくれた。
第三は殺陣の凄みである。
新国劇の華である激しくも華やかな殺陣をたっぷり見ることができた。
以上三つの要素があってこその成功であった。
「新国劇」「たっぷり」「笠原」と年配の男性客の絞り出すような声が印象的だった。
客席も圧倒的に男性が多かったが、現在、年配の男性客が見たいと心動かされる芝居がどれほどあるだろうか。
若獅子で救われる観客が必ずいる。
古典を古典のままにせず、今の芝居として見せようとする笠原章の試み(自然体の台詞回しなど)も芝居の成功の鍵となっていた。
「役者に年は関係ありません」と力強く挨拶した清水彰の言葉通り創立三十年、四十年に向けての若獅子の更なる活躍に期待したい。
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