07/3/3.土 四谷須賀神社・大広間
講談のススメ 其の参 神田阿久鯉(あぐり)勉強会
「阿久鯉の慶安太平記を聴く会(十四)」
ひらりん
連続講談なんて難しそうと敬遠していたのに、はまってしまった。
神田松鯉(しょうり)一門、先代山陽師の孫弟子に当たる講釈師は、低音の落ちついた声と雰囲気のすっとした女性だが、語る物語は、神田+女流の一般的なイメージとは正反対。
心温まる親孝行や出世物語には目もくれず、極悪人、悪女、鬼婆だらけの殺伐とした物語ばかり。
可愛らしい女性は殆ど登場しない。
一見とっつきにくそうな歴史物なのだが、どうしてどうして。
一昨年の「旗本五人男」では、身分は高いがどうしようもない五人が、金とみれば人を殺して奪い取り、いい女を見ると声をかけ、言いなりにならないと切る。
自業自得で落ちぶれると、全ては他人のせいだと、逆恨み。
まるで、「現代の若者の短絡的な殺人事件」だと親近感を持つ。
芸者の愛人に高価な着物をねだられれば、集金帰りの商人を、「ちょうどよい」(全然良くない)と辻切りで金を奪い、女を訪ねるが留守。
実は商人は芸者の叔父で、弔いに出ていたのだ。
というような、インド映画風の偶然もてんこ盛り。
後日、殺人が露見して、逃亡先から逃げきれぬと悟った男は、落ちぶれたのはあの女のせいだと、復讐を誓い、顔を焼いて人相を変えて江戸に戻る。
なんとも肝の据わった逆ギレ。
現在は、更に固い、元禄時代の由比正雪の乱を描いた「慶安太平記」。
池袋芸術劇場の談志・談春親子会のリレー落語は、この物語の一部。
阿久鯉さんの持ちネタは、談春師の(取りあげそうな)講談と共通する気がする。
今回の下りは、大詰めの「奥村八郎右衛門の裏切り」と、反乱が、つまらない囲碁の争いから露見し、正雪一行が、切腹して果てるまでのニ席。
13人のうち、最後の1名はおとなしく切腹せず、追っ手を道連れにしつつ、腹に刀を突き立て、臓物を投げつけ、自分の首をかき切って果てる、という、映像に出来ない件。
内容と阿久鯉さんの語りの迫力に、笑ってしまうほど。
又、妙齢の女性が、何ゆえ、どこに惹かれてこのような講談を選んでいるのかという興味も尽きません。
上品で落ちついたマクラでは、ふっと、機転の効いた毒のあるコメントが入り、30人強の観客は、時々むせて笑っていました。
そういえば、年配の講談ファン以外に、20代も時々目立つ美男美女の常連客ありで、阿久鯉さんの芸の幅が、ファン層の
広さに繋がってる様子。
この勉強会以外は、ちょっと敷居の高い講談の定席でしか見られない阿久鯉さんですが、初の、一般向けの会を、下北沢のバーで開催予定。
ニューオリンズバー・ビッグチーフ「講談大酋長」
普段は、ケイジャン料理にニューオリンズ音楽を楽しむ酒飲みの集う場所で、どんな姿を見せてくれるのか楽しみです。悪の権化のような鬼婆の話がきけるといいな。
4月14日(土)18:30- 開場 下北沢一番街
詳細はこちらhttp://bigchief.under.jp/
講談のススメ詳細 http://www009.upp.so-net.ne.jp/shota/nakano/
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