06/3/7 国立演芸場「古今亭志ん朝一門会」
高野ガラス店主人
国立演芸場で志ん朝一門会を見ました。
八朝さんのご陽気な『権助魚』、
志ん輔さんの『紙屑屋』の手練れ振り、
『大山詣り』をポンポ〜ンと語って締めた志ん五さんが、
やたらに格好良い落語会でしたよ。
そこで大爆笑を取った笑組の舞台も凄かったけど、
松旭斉美智さんの奇術が感動的だったんです。
何かたっぷりした洋風着物だなぁと思っていたら、
奇術が終わって、すっと脱いだんです。
そしたら黒紋付きの着流しに男物の帯。
どちらも志ん朝師匠の形見なんだそうですよ。
舞台の下手に緋毛氈を敷き、
笑組の痩せた人が三味線、朝太さんが太鼓で登場。
住吉踊りが始まりました。
僕は歌や踊りには詳しくないですけど、
真夏の浅草演芸ホールで志ん朝さんが頭でやっていた、
いつもの曲と文句と踊りだということは分かります。
とっても愉快で楽しい踊りなんですけど、
あぁ、いつも浅草じゃ、揃いの浴衣で楽しそうに踊ってたっけな、
あの最後の舞台だって、
客席からはちっとも変わらずに見えたよなぁ、
なのに何で僕は10日興行の間に3日も通ったんだろう?
しかも千秋楽の日は、ウナギを食べてから行ったんだ、
そんなことが頭の中をぐるぐる回っちゃって、
何だか目頭が熱くなってしまいました。
ここに志ん朝さんがいたって不思議はないはずなんです。
僕の親父よりずっと若かったんだから。
でもここにはいなくて、
その形見を着て美智さんが踊っている。
明るくおめでたい住吉踊りを見て、
こんな気分になるとは想定外でした。
年を取ったら、こういう趣向にやたら弱くなりました。
まぁ基本的に軟弱だから、
その手のものは見ないようにしているんですけど、
まさか、かっぽれで胸が詰まるとは思いませんからねぇ。
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