●2012/3/31.土「池袋演芸場余一会・昼の部・柳家喬太郎独演会」
栗之助
3月は、31日がちょうど土曜日、池袋の喬太郎独演会へ。
余一会の時の師匠は、「いつもとは違ったコト」をやるのが名物。
そういえば『極道のつる』や、艶笑落語の珍ネタ『吉田御殿』を初めて聴いたのも余一会だったっけ。
開口一番は前座さんかと思いきや、私服姿の喬太郎師匠の登場。
前売券は当然完売、当日券は立ち見のみという状況で、開演時間にはすでに三方の壁にお客さんが張り付いている。
立ち見だけど「お膝送り」のお願いのために開演前に登場したようだ。
喬太郎師匠の一席目は「仏馬」。
ちょっと珍しい噺だけど、最近はおとうと弟子の喬之進さんもかけているネタ。
馬が出てくる落語は、田舎の、のどかな川べりの風景が思い浮かぶ。
馬のす、馬の田楽、そして仏馬。
酒が大好きな不真面目な坊さんと馬の飼い主であるお百姓さんとの、とぼけたやりとり、ああ「春」って感じ!
酔って草の上で寝るなら絶対春が気持ちよさそうだもん。
目に浮かぶのは菜の花で黄色くなった土手。
次に登場した喬之進さんのネタは『たいこ腹』。
さすがに喬之進さんの体型では、喬太郎師匠がよくやる「腹芸」
(立派なお腹を上下させる、師匠ならではの芸)は見られず(当たり前だ!)。
古典落語を楽しく、きっちり。
そして、なぜか「釈台」が登場。
たまに上方の落語家さんが出るとき、台と膝隠しが置かれるが、
これは「笑点」の大喜利で歌丸師匠が使っているような本格的な釈台である。
喬太郎師匠登場。
前日大阪での桂三喬師匠との二人会で、小拍子と台を使う「上方スタイル」
で初めて『寿司屋水滸伝』をやったのだという。
で、せっかくだから東京でもやってみようと、釈台と小拍子を使うことにしたという。
小拍子はカタカタと小気味よい音が響くはずなのに台に当てた時、「ぺちっ」という情けない音しか出ない。
むむ?
なんとビジネスホテルの洗面所に置いてある“二つ折りのプラスチックの櫛”が小拍子がわりだ!
普通にやるのではなく、「すべてを関西弁バージョンで語ってみる」という試み!
おお、東京の噺家がオール関西弁で一席通すとは大胆な…やっぱり余一は楽しいなぁ〜。
元洋食屋の寿司屋の大将、ただでさえ「ねちっこい口調」が
ベタベタ感をかもし出すキャラが、さらにパワーアップ。より情けなく、気色わるーくなっている。
冒頭で辞めてしまう板前さんが移る店も、築地ではなく大阪の地名になっていたようだ。
ところどころ関西弁が怪しくなりつつも、喬太郎ワールド全開の、ヘンテコな寿司屋繁盛記を語り終える。
仲入後は長講1席。
花見シーズンの噺でおせつ徳三郎。
この噺、喬太郎師匠で聴くと泣くんだよなぁと思っていると、いつものパターンではない。
旦那は、娘のおせつと奉公人の徳三郎が良い仲だと聞いても、認めてやってもいいくらいの感じ。
しかし、二人を一緒にさせまいと固執する番頭。
店乗っ取り陰謀やら、刀屋の主人が実は…とか、立ち回りがあるやらの『任侠おせつ徳三郎』。
美しくも悲しく終わる喬太郎師匠の「悲恋バージョン」とは、また違った「ええー!?」な結末。
余一会は、もともとお祭り的要素の大きな会。
いつもの寄席、いつもの落語会では見られない噺家さんの一面が見られるのが楽しいところ。
次回の喬太郎師匠の余一会は、例年通り行われるなら8月。また絶対行くぞ!
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