しもきた空間リバティ 「絹9」

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05/4/21 かもめ座「カバレットシネマinかもめ座」
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京浜急行は日ノ出町駅界隈。
飲み屋に、風俗店に、ストリップ劇場に、場外馬券売り場。
よい子のみなさんには縁のないお店がやたらと目に付く街です。
(例外的存在の横浜中央図書館は、ちょいと奥まったところに不本意そうに建っております。)
かもめ座はそんな街にふさわしい映画を上映する映画館でした。
二年前に閉館するまでは。
それがたった一日だけ復活するというのです。
それも、かつてのような映画を上映するのではなく、実力派の表現者のみなさんがすばらしい芸を披露してくださるという企画です。
この話を教えてくれたのが、「カバレットキネマ倶楽部」を見損ねた友人Mさん。
「ぜひご一緒させてください」とお願いし、楽しみにその日を待ちました。
当日は駅で待ち合わせ、徒歩三分の会場へゆっくりと出向きます。
(早く着きすぎても、私たちが時間つぶしできるようなお店はないので。)
お隣の光音座は今も健在。
かかっている映画のタイトル、独特の字体、看板の絵に驚く。
(今時、写真ではなく、看板屋さんの手描きというのも珍しい。
首輪をはめられた男性が、苦悶の中にも薄っすらと悦びの表情を浮かべているらしき絵。
しげしげ眺める勇気はないので、はっきりとはわかりませんでしたが。)
入り口前で少しおしゃべりしてから、開場時刻と同時に受付へ。
チケットには映画館の入場券を「しゃれで」(受付の人=たぶん主催者のクマさん、の言葉)使用。
こういう遊び心のある演出は嬉しいですね。
随所に貼られた「エビスビール始めました」のポスター。
なぜか洗面所の中に置かれた自転車。
(スタッフの女性が「トイレに入ったら驚きますよ」と言っていたのはこのことか。)
開演までの三十分間、流れていた昔の歌謡曲。
そしてなにより、会場全体のレトロな雰囲気がとてもいい。
舞台両脇にはきちんとカーテンが下がり(今時はスクリーンだけの映画館も多い)、使用禁止の張り紙が目立つ客席はビニール張り。
階段の手すりは見たところ真鍮製。
風格ある扉に書かれた御婦人用御手洗所の字体も古めかしく、個室を覗けば水洗タンクは上部にあり、鎖を引っ張って水を流す年代物。
「子供の頃の郷愁といえば、まず映画館です。
日の当たらない空気の臭いとか、階段横の掲示板からポスターを盗んだりとか……
今の映画館のほうが断然イイはずなのにね」
「先週かもめ座の前を通ったら、おじいさんが掃除をしていました。
2年間よく壊されなかったよね。
地震がきたら観客もろともペチャンコになりそうだけど」
これはMさんから届いた手紙とメールの文面。
そう、かもめ座はまさにそんな昔の映画館。
そして日ノ出町駅界隈自体、日暮れ町と改名したほうがよさそうな、淀んだ空気とじめじめとした日陰の似合う、あやしげな街なのです。
この独特の懐かしさ、うら寂しさ、いかがわしさが背景にあってこそのカバレットシネマです。
以下、出演者、演目の感想など。
・ 安西はぢめ(アコーディオン芸人)
主に出演者のみなさんの演目に合わせたBGMを担当。演奏技術はもちろん、アドリブのセンスもなかなかで、楽しませていただきました。
・ 三雲いおり(ヴォードビリアン)
会の進行役。酔っ払いに扮し、出演者の紹介をしたり、ご自身の芸を披露したり。
軽さのある演技が会の雰囲気にぴったり。
・ 石原耕(バナナのたたき売り)
最初は買う気のなかったお客さんを、どんどんその気にさせていく話芸はさすがです。
(「実際には、お金は払わなくてもよい」ということで、みなさん安心してその気になったのかもしれませんが。)
・ James(BMXアクロバット)
23日、24日の野毛大道芸に出演予定のパフォーマー。特別ゲストでご登場。
見た目も、演技もとてもかっこよろしかったです。
・ リリー・セバスチャン・マッケンロー(詩吟パフォーマー)
性別、国籍不明のお名前ですが、(拝見した限りでは)うら若き乙女、大和撫子です。
詩吟を生で聴くのは初めての体験。もう、単純に気持ちいいです。
でも、たぶんうまい人だからですよね。素人の下手の横好きだと、落語の「寝床」みたいなことになりそうだ。
・ 村田朋未(パントマイム)、ふくろこうじ(クラウン)
男女の恋の行方をパントマイムで演じるという趣向。
意中の女性にプロポーズという大事な時に、婚約指輪を納めた箱の蓋がうまくあけられず、大失敗をした男性。
怒った女性はおしおきに? 男性の衣服をつぎつぎに剥ぎ取っていく。
ある程度までいくと、天地をぬいたダンボールの箱の中に入るように命じ、最終的には身包み剥いでしまう。(お腹から膝にかけてはダンボールで隠れているので、おまわりさんのお世話になる心配はなし。)
同様に女性のほうも徐々に薄着になり、生まれたままの姿にかなり近い状態となる。
すると、男性が持つ箱の正面、中央部にあけられた穴からバルーンアートで使用される細長いバルーン(色は赤)が現れ、ピノキオの鼻のようにぐんぐん伸び、女性の口元へ到達。
女性はその先端をソフトクリームのようになめたり、アクロバティックな動きをしたりと大活躍。
途中、二人で一つの箱に入ってたわむれるような動きもあり。
お終いには、それぞれが箱を持って(女性の箱の正面、中央部にはモザイク模様が貼り付けられている)、舞台を下りて行く。
やがて照明が落とされ、二人は手にした懐中電灯であちこち照らしながら通路をぬけ、扉の外へ。
これがおおよそのストーリー。
なまめかしいけれど、ユーモラス。そしてなにより品がある。(ここが大事)
真の意味で大人の芸です。
お客さんも、そのよさがわかる大人の方ばかりで、まことによろしゅうございました。
・ VJコミックカット(映像)
パロディ映像三種。
○ あらビックリ、なんとトラさんとヒロシさんは実は薔薇族同士だったのね、というお話。
あのシリーズのファンには見せられないなあ。
○ シュールな「笑点」
普段、あの番組を見る習慣はないけれど、これなら見たい。
○ 「かもめ座に捧ぐ」(正式タイトルは違うと思う)
まず、「あの映画を見たことのない人、あの映画に思い入れがある人は見ないでください」といった注意書きが映った後、「ニューシネマパラダイス」のジャック・ペランがなつかしそうにスクリーンを見つめるシーンが映る。
次に日本のさまざまな白黒時代劇映画の一部が連続的に映る。
選ばれたシーンの台詞はあきらかにあるカテゴリーで統一されている。
メ●ラ、ツ●ボ、カ●ワ、キ●●イといった言葉が必ず含まれている。
しかも台詞と台詞の時間的間隔がどんどん狭まり、お終いにはこれらの言葉が機関銃のように連射される。
そして、ジャック・ペランの感慨深げな顔、感動にふける顔、が間に幾度か挟まれる。
私とMさんは、これには大笑いしました。
それこそキ●●イのように笑って笑って、笑いすぎて涙が出てきました。
不謹慎だと思う方もいらっしゃるでしょう。
でも、あの種の言葉を一度に何度も(おそらく一生分)耳にすると、放送禁止用語の無意味さがわかって笑わずにはいられなくなるのです。
笑いながら「言葉狩り」に対する鋭い批判精神を感じて痺れました。
締めはみんなで「港町十三番地」を歌ってお開き。
廊下に出れば、出演者の皆さんが並んでお見送り。(安西さんはアコーディオンを奏でながら。)
お客さんは暖かい気持ちで家路に着けます。
お終いまで楽しませてくれるすてきな会でした。
「濃密で猥雑で笑える空間にいられて、幸福な気分です。
この贅沢さを味わったのが数十人ぽっちだけなんて……。
まりしろで広く知らしめてね」
というMさんの言葉もあり、長々と書いてみました。

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