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内幸町ホール「東西若手落語家コンペティション 2007」
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彦ちゃん&栗Q」
大阪・天満天神繁昌亭
「桂あやめ落語家25周年★五日のあやめ〜
一日三席相勤めます〜」
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桂あやめ落語家25周年★五日のあやめ〜一日三席相勤めます〜
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07/6/20.水 内幸町ホール「東西若手落語家コンペティション 2007」
寒月 

今年から始まった共同通信社主催の大会です。
東は二つ目クラス、西は芸歴13年未満の若手落語家が対象。
会場の投票形式で、支持の多かった各予選1人ずつが来年2月の本大会に進み、大賞が決まる。
予選の賞金10万円、決勝は賞金50万円。
いち落語ファンとしては、定評ある若手落語家に加え、新しい落語家を体験する絶好の機会。
特に、東京ではなかなか聴けない、上方の若手を知る機会として貴重です。

この日は、予選の2グループ目にあたります。
雰囲気は、前回(4月22日)とはやや異なり、お祭り色は、すこし薄らいでいました。
4月の時は全員が4番バッターのつもりで打席に立っていたと思うのですが、
今回は、全員がチームプレーに徹していたように感じました。
1番は1番の笑いの取り方、2番は2番の笑いの取り方、といった雰囲気です。
ヒットでつなぐ打線。堅実で、豪快な三振はない。ホームランもない。
プロとしては力量の範囲内なのかも知れませんが、コンペティションとしては少し残念な気が。
たまたま、そういう持ち味の人たちが集まったのか。
それとも、舞台袖にいる小朝さんの無言のプレッシャーが大きかったのか。
結果、1回目の方がスリリングだったように思います。

林家いっ平さん、成田ゆみさん司会で、順番くじ引きは前回どおり。
ちなみに、この成田さんは、海老名家の親戚の方・・・素人だそうです。
帰国子女のバイリンガルぶりを披露したり、審査員を「調査員」と言ってしまって、いっ平さんに「国税局か!」と突っこまれていたり、
なかなか芸達者なところを見せていました。
くじは、「残り物には福がない」展開で、八光、きん歌、志の吉、風車、歌之助、の順に決定。

1、月亭八光 『動物園』
そそくさと出てきて、マクラ・・・というよりも、「すべらない話」に近い語り口。
・青光りする坊主頭でいた時、知らない小学生がむっちゃ嬉しそうに自転車で向かってきて、「サバ!」と言って逃げていった。
・パソコン買ったが、何していいかわからない。とりあえずダブルクリックしていたら、画面にゴミ箱しかなくなった。
今できるのは、ゴミ箱動かすことだけ。
・後ろ向いてても大阪のおばちゃんが近づいてくると気配がわかる。
往来の激しい道路で後ろからどん!とどつかれ、何を言うかと思ったら「あーびっくりしたー!」
・「はちみつ!あんた、靴の下にうんこちゃん踏んでんで」
僕は呼び捨てなのに、うんこには「ちゃん」付けてる。どういうこと?
・大阪のヒトはどうでもいいことを伝えたがる。
一度電車から降りた高校生がわざわざ乗ってきて、どうしても伝えたいことがあるというから何かと思ったら
「2つ前の車両に桂きん枝が乗っとった」
どうでもええっちゅうねん。はっきりそう言ってやったら、今度は近くの座席のおっさんが
「おい!ワシは坂田利夫と同じマンションや!」どういう負けず嫌いやねん。
トップバッターを感じさせない力の抜け具合と、会場のあたたまり方。
笑いの感覚としては、今回のメンバーの中で一番新しいと思います。
ただし、肝心の動物園は2分30秒でやるという、開き直った構成。
「パンくれ。」〜「安心せえ。ワシもやとわれた。」まで。最後の方のみ。上り新幹線で言ったら、品川−東京間だけですよ。
落語を期待した人には、きっと肩透かしに感じられたことでしょう。
そんな点もふくめて、1番バッターに徹した落語でした。

2、三遊亭きん歌 『権助魚』
八光さんに当てられてか、若干漫談色の強いマクラ。芸能バラエティの話題が多い。
・近く落語講座の講師をやるので参考に「しゃべれどもしゃべれども」を見た。
見てわかったことは、国分太一みたいな落語家を期待するOLが、香里奈みたいなOLを期待する講師に会って、お互いがっかりするだろう、ということ。
・TOKIOはメンバーのうち3人が落語ができる。これがKAT-TUNやNEWSだとそうはいかない。苦労してないから。
TOKIOは苦労してる。バンドの方に回されて、このままじゃ俺たち男闘呼組みたいになっちまうぞ・・・と危機感があったから仕事を選ばない。
スケジュールがあけば、ダッシュ村で畑を耕す。
・浅草演芸ホールで、某落語家の真打披露の最中に死んだお客さんがいて、遺族は恨みに思うどころか「これも縁だから」と、以来、独演会には一族引き連れて来るという、とても良いお客になった。今日もそんなお客は・・・
など。
権助は・・・ちょっと、作り過ぎかな?品のない感じに仕上がっていました。
魚に驚くシーンで、「ぎょっ」、「うおっ」、「フィッシュ」「さすがにそれはない」という三段オチが楽しかった。

3、立川志の吉 『牛ほめ』
「順番のくじ引きで、運を使い果たしたような気がします。すみませんが、一つ、わーーっと拍手を頂戴してもよろしいでしょうか」
初めに、客席の拍手を乞う。ずるいなぁ。会場の温度を測りつつ、あわよくば自分の空気にしてしまおうという魂胆。じつにずるい。
ただ、これで、賞を獲りたいんだ!という本気さが伝わってきたのも事実。
客の反応の良さに安心した様子で、マクラに入る。
・携帯で名前を変換すると「立川市の基地」。昭和記念公園と呼んでください。
・「この犬クソかわいー」クソなのか可愛いのかどっちなんだ!
「ふつうに面白かったっす」普通なのか面白いのかどっちなんだ!
・寮生活時代の話。独演会や<繭から>でやっていた新作を、マクラにアレンジした内容でした。
「ここは、一年ゴミ、二年人間、三年神様や」
「ぉーい、おまえ風疹にかかったそうやのう。ええのう。抱きしめさせろや」
「おまえらベランダでなにしとるんや」「はい。輝く星空を見てました」「お前らの足元のタバコの先が輝いとるわ」
バカ兄弟の小噺から、与太郎の牛ほめへ。無邪気な話が性に合っているせいか、ムリがない。
志の吉さんは、プレッシャーのかかる舞台の方が、間延びせずに良いような気がします。
仲入り。
4、鈴々舎風車 『真田小僧』
オープニングでは、坊主頭を散々「ムショ帰り」といじられていた風車さん。
まずは落語界のルパン三世と自己紹介。
・馬風師匠はああ見えてもいいヒト。「圓歌のタマとって来い!」なんてことは決して言わない。
ただ、「この世界にいられないようにしてやろうか」とはよく言う。
・幼い頃父が蒸発して貧乏で、風呂がなく、洗濯機の中で体を洗った。洗濯機の中に立たせて、頭からホースで水をかけながら母親が、「回せたら楽なんだけどねえ」と言った。
・学童クラブで一席やったが、ちっとも受けずバカ蹴られ。ジャイアンみたいな小学生から「下手くそ!」と言われた。
陰で言われているのは知っているけれど、面と向かって言われたのは初めて。
など。
「おねえちゃんはなんで化粧をするの?」「それはね、きれいになるためよ」「なんで、ならないの?」
の小噺から入って、真田小僧へ。
風車さんの落語は心地いい。眼を閉じると寝入ってしまいそう。眼を開けても、くるくる変わる表情が見てて心地いい。
でも、終わってみると、きれいさっぱり何もない。
だから、もの凄く、もったいない。何かのきっかけで、格段に化けるような気がする。
それに、他の人との組み合わせによって、巧く見えたり埋もれたりする落語家なのかもしれない。
気になったのは、前置きが多いこと。洗濯機で体を洗ったとき、母親が、「回せたら楽なんだけどねえ」と言ったエピソード。
「回しませんよ!回したら虐待ですからね!」の前置きは要らないと思う。
それや、真田小僧の終わりの方のセリフ、「なーんだつまんねえ。横町のあんまさんでした!」は、つまんねえは言わないか、
前後逆にした方が生きるように思うのですが。どんなものでしょう。
5、桂歌之助 『青菜』
歌々志改め3代目歌之助さん。
この1月に襲名とあって、魚でいったら旬。
本人も脂がノッている感じ。
・朝の番組の血液型選手権を見てきた。全然気にしてないけれども。自分はA型。一番はB型だった。おしゃべりが絶好調。
ほおう、今日にぴったりやないか、誰やろう。全然気にしてないけれども。
・高速道路を運転していたら、道路の脇に同じ小さい看板がたくさんあって、ちらちらする。でも、読みにくい。
あまりに気になるので思い切って見たら、「わき見注意」の看板だった。
・落語家だということは近所の人にもよう言わん。幸い顔も売れてないので、向こうも気づかない。
昼間は家にいて、大声で独り言ぶつぶつ言って、夕方になると大きな荷物抱えて出て行く、けったいな人に見えたに違いない。
出番の深いところ、いかにも5番バッターらしいそれなりの重さのある噺。
オーバーなしぐさの、腕の力の入りようがことごとく可笑しい。
江戸風の枯れた「青菜」しか知らない身には、この「青菜」は衝撃でした。景気もいいし、しっとりした空気感もある。
ただ、合わない人には合わないだろうな、とも。筋とは関係ないところの笑いが強い。
上方の諸派の中で、これがどの程度正統派なのか、わからないのがもどかしいところ。

投票の結果、1位に選ばれたのは、立川志の吉さんでした。2位は桂歌之助さん。
最後に志の吉さんが「僕、B型なんです」とカミングアウト。
血液型選手権が当たっていたことで、オチがつきました。

奇しくも、前回の笑福亭たまさんに続き、3番をひいた人が優勝したわけですが、
順番よりも影響力が強いのは、賞を獲りたい気持ちがストレートに伝わってくるかどうか、という気がしました。
客は、獲りたい気持ちの強い人に、獲らせてやりたくなるようです。

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