●2017/5/5.金 赤坂ACTシアター「恒例志の輔らくご第一部大忠臣蔵
〜仮名手本忠臣蔵のすべて〜第二部落語中村仲蔵」
岡町高弥
初夏のような陽気の5月5日。のべ二万五千人が聴いた中村仲蔵、今年は止めようかと思ったが、プロデューサーの「ジャニーズなら1日です」におされてやることになりましたと笑いを誘う。
第一部は徹底解説、忠臣蔵。志の輔が浴衣姿で一時間、世にいう忠臣蔵とドキュメント赤穂事件は全く違うことを教えてくれる。全十一段の仮名手本忠臣蔵を歌川広重の浮世絵を交えて一段一段丁寧に解説。史実の赤穂事件が物語に変貌していく過程を追うことができ、長い長い仮名手本忠臣蔵のすべてを知ることができる。このすべてを知った上で、中村仲蔵を聞いて欲しいという志の輔の思いが毎年見るものを熱くさせる。
志の輔いわく、忠臣蔵は士農工商を越えた物語であるから人々の共感を得たと。
講釈師の神田愛山は忠臣蔵とは、「別れ」をテーマにしているから愛されたと。
いずれにせよどんな深読みも許すのが忠臣蔵。今回は仮名手本忠臣蔵に潜むダ・ヴィンチコードも披露された。
第二部、お待ちかねの中村仲蔵は弁当幕と揶揄された見せ場のない忠臣蔵五段目を持ち前の創意工夫でけれん味たっぷりの場面に作り替えた芝居の神様と呼ばれた仲蔵一代記。なんの血筋も人脈もない中村仲蔵が四代目市川團十郎に見いだされ、下積みから名題まで上り詰めていく芝居一途の姿はどこか演者の志の輔と重なって見える。
二時間四十五分、たった一人で大きな芝居を見たような満足感を与えてくれる志の輔らくご。その完成度は年々進化している。これはもうただ事ではない。常に高みに挑戦し続ける志の輔らくごから目が離せない。
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