●2017/3/31.金 中野サンプラザ
「清水ミチコ30th AnniversaryひとりのビッグショーReturns」
岡町高弥
モノマネは残酷な芸だ。常に新しいネタを要求され、どこまでいっても偽者と揶揄される。
そんな厳しい世界で30年も第一線で戦っている清水ミチコは奇跡と言っていい。
「清水ミチコ30th AnniversaryひとりのビッグショーReturns」を見届ける。
昨年、このツアーの初日をかつしかシンフォニーホールで見ているが、小池百合子のモノマネが格段に進化していることに驚いた。しかもネタが更新されている。オープニング映像で清水ミチコ扮する小池百合子が「ダイバーシティ」やらなんやら横文字を入れて諸注意を高飛車に訴える。これが傑作。この映像が見られただけでもツアーを2回見た甲斐があった。
お馴染みの青汁CMのパロディーに続けて山口百恵引退コンサートに入って昨年引退した成宮寛貴や江角マキコをネタにする。この流れが絶妙。魚は死にたてが一番美味しいと語る平野レミ、自分が日本昔話になった市原悦子、逮捕された朴槿恵など止まるところをしらない。音程がおてんばで魂でマイウェイを歌う黒木瞳など何度聞いても笑える。
そして、神の世界に入ったシンクロ具合、矢野顕子の歌真似はますます磨きがかかっている。山下達郎作曲法で日本のサンタの妻はマリアさと分析しサカナクションやスピッツ、森山一族(いとこはかまやつひろし)、椎名林檎の作曲分析は見事な批評になっている。ロックバンド、クリープハイプの真似までやってしまうフットワークのよさには舌を巻く。
三分の悪意と七分のリスペクト、このバランス感覚と嗅覚が清水ミチコの持ち味だ。
思えば30年前ジァン・ジァンでデビュー直後の清水ミチコを見て以来、追いかけているが、彼女は常に深化している。大瀧詠一が楽屋でダメ出しをしていた光景を今もよく覚えている。たくましい批評精神と卓越した技芸、そしてすべてを茶化す道化力、なるほど国民の叔母と呼ぶにふさわしい。
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