5月3日、浅草・ときわホール。「浅草名人伝説」談志『替わり目』
小池五十歩百歩
ブラックさん主催の「浅草名人伝説」に行きました。
中入り前が、談志さんでしたが、ミッキー亭さん、まだ来ぬ彼(談志)のために噺をのばしたものの、
それでも来ぬので中入りとなりました。
私はまだ高座の談志という人に魂捧げたいような気持にまでなったことがなく、
皆さんのウワサ話にうらやましくなるばかりです。
彼の旬はもう終わったのか?
ただただ「過去に圧倒的に人々を惹きつけた栄光の影」でもいい、残り香でもいい、残照でもいい、
とにかくその絶対的な談志という存在をナマで体感したかったのです。
でも、ひとり会は行きにくいし・・・。
「ブラックさんの会に出る」とか、「自由席のホール」とか、今回の条件は私にとって行きやすい会でした。
こんなに張り切って来たのに談志さん、上がんなかったら・・・
と心配しましたが、梅田佳声さんの紙芝居のあと、登場!!でした。
険しくないニコニコと人なつっこいような顔だったので嬉しくなりました。
「声が出なくなってしまって・・・。ガキの頃に1回声が出なくなって、もうダメだなと思ったんですけど、
それと同じでね。『イヤ、いつもと変わんないよ』とお客さんに言われたんですけどね。
皆さんは聞きづらいでしょうが、私もしゃべりづらい」
と言っていて、言われてみるとそうかな、とも思いましたけど、最後にはすっかり忘れてました。
「紙芝居の思い出をアットランダムに・・」しゃべって、ふと「先代の○○が(円喬だか、円歌だか・・・。
忘れてしまった)こんなのやってましたねえ」と、酒の断り方に職業が出るというので、
左官屋、交通整理の人、ボクサー、鳥屋と、もう動きも口調もすごい見事で。
こんなおもしろいことが身に備わっているだけで感動的、『私、こんな芸人じゃないンですけどね』と
すぐに捨てたのも、ひゃあって感じでした。
川柳もぽんぽん出るし、それがすごく楽しそうで私も楽しかったです。
そして、『替わり目』でした。
落語の、日常のなかの呑気と狂気の入り混じるとこが、たまらんく好きなので『替わり目』の
一面だけでない亭主の両方の人間性が伸び伸びと伸びまくっているのもかわいらしいく。
なんで最近そういう人いなくなってしまったんでしょう?
子供の頃、まわりにいた近所の大人は今思えば結構めっちゃくちゃなとこがあった気がします。
わたしは今東京だし、若者ばっかりだからまだ味が出てこんのでしょうかね。
江戸の人らって好き勝手なとこと、江戸社会のなかで自分の立場や役割を果たしているところと、
なんだか一人の人間の中で大人と子供が共存しているようです。
「女は優しさで男を征服してきたんだよ」と噺の前に談志さん言ってました。
ご亭主が、おカミさんはおでんを買いに外に出てると思って、独り言でおカミさんをほめてるの聞かれてしまって
「お前、まだ居やがったのか、聞いてやがったな」
って言い訳すると
「わかってるよ、お前さんが偉いんだよぅ、おまいさんの方がエライよ」
っておカミさんが言う。
「エライ目にあったのは、こっちの方だ」
というサゲで。で、従来のサゲではちょっと意味が違ってくると思うんですよ、と談志さんが自分の気持を
説明してました。そういう噺の中のディテールの違和感や辻褄の合わぬとこを客に任せず、ちゃんと
自分の納得するように考えて、そのように演る談志さん。すごいや。
噺も泣きそうによかったし、過去の人なんかでは全然ないこともよくわかりました。
絶対にずーっとトップですね。
テレビに出るときのイラついていて怖い人じゃなく、とてもかわいくて、好い気持が取りまく談志さんは、
格好よかったです。
すごかった。ぼんやりしてまいりましたもん。
その後、他のライブへ行く予定があったのですが、あんまりよかったので、
気分をちょっとも濁したくないとそのまま真っつぐ帰ったのでした。
top |