●08/11/6. まつもと芸術館小ホール「松本あるぷす寄席」
岡町高弥
11月にしては暖かい日曜日、「松本あるぷす寄席10回記念公演〜柳昇の息子たち〜」に出かける。
なんと、春風亭昇太と瀧川鯉朝の二人会。
「師匠選びも芸のうち」というが、柳昇チルドレンが師匠の思い出をネタに存分に笑いを取っていた。
まずは、鯉朝が「柳昇は5割の師匠といわれていまして、取った弟子の半分は辞めているんですね。しかも交互に辞めていく。不思議なもんですね」といって笑いを誘う。
「おまえは、戦争があったら兵隊に行くかと師匠に聞かれ、師匠の命令なら、嫌ですが行きますと苦し紛れに答えたら、喜んで一万円くれました」とはいい話しだ。
続いて、昇太が登場し、「鯉朝は死んでやるが口癖の、泣き上戸の気持ちの悪い弟弟子です。瀧川一門に移ってくれて本当に良かった」と言って会場をわかせる。
「柳昇一門は多摩川に鮭の稚魚を放流しているようなものなんですね。とても生きていけないような環境で弟子を育てていく」とはうまいことをいう。
「とにかく優しい師匠でしたが、いつも心にとがったものをもっていましたね」
「今度戦争やったら負けないって」
「弟子は本当に面倒くさい。わざわざ飯を食わせて、お小遣いまで渡して自分のライバルを育てているようなもんですから」
とは明晰な昇太ならでは卓見だ。
「宴会の花道」「時そば上方バージョン」を演じるもきちんと落語ビギナーに前座噺の難しさを教える。
「普通に日本語が話せれば大概の人情噺はうけるんです。難しいのは前座噺。長い噺をやってどっちらけになるより中身の濃い前座噺の方がいいんです」。
柳昇の思い出で場をもりあげる鯉朝、さらに軽く「落語の見方」も教える昇太。
今や落語芸術協会、最大の団体、柳昇チルドレンが落語を全国に広げていく。
柳昇の芸は今も脈々と受け継がれているようだ。
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