●08/10/18. 新宿スペースゼロ
「おっ、ぺれった(人知れず)20周年記念公演
『ちょっとノゾいてみてごらん』」
めぐりん
ことの発端は「笑って笑って笑いまショー」の歓談タイムのときに、好田タクトさんからチラシをもらったことだった。
彼がゲスト出演すると言うこのお芝居、チラシにはタイトルとキャストとスタッフと会場の地図以外の情報は載っておらず、さっぱり正体不明だったが、「軽演劇」というキーワードが引っかかり、「おっ、ぺれった」というのが劇団の名前なのか演目のタイトルなのか、それすらも知らないまま私は新宿はSpaceゼロに足を運ぶことを決めていた。
ネットで調べてみたところ以下のような説明が見つかった。
「『おっ、ぺれった』とは1988年、売れない俳優である永井寛孝(脚本。演出)と田中真弓(制作)、そして同じく売れない歌手の竹田えり(作曲)が、自分たちを舞台に立たせるために、結成された歌入り踊り入り芝居を創作、上演するグループです。」
「おっ、ぺれった」というのは劇団の名前で、「ちょっとノゾいてみてごらん」というのが劇そのもののタイトルであった。
会場には立ち見が出るほどお客さんぎっしり。
かなりの人気公演らしい。
永井寛孝さんと田中真弓さんが前説のときにたずねてみると、20年前から観ている人も何人か。
オペレッタ・・・といいたいけれど、そんなに唄うまくない。ミュージカルといいたいけれど、そんなに踊りがうまいわけじゃない・・・ってことで「おっ、ぺれった」
「ぺれった」というのは「ぺれる」という動詞の過去形なんです・・・なんて、漫才のような軽妙な「前説」があった後、幕が切って落とされ、出演者全員によるパワフルな唄とダンスから劇がスタート。
少子化のあおりをうけ、児童が減る一方の都会の小学校の、家族参加型の学芸会にまつわるドタバタ喜劇である。
少子高齢化、家族の絆、都会の人口ドーナツ化・・・と、社会派っぽいキーワードを盛り込んではいるが、そこはあえて掘り下げず。とことん軽く明るくばかばかしい。
学芸会の準備にまつわるドタバタが第一幕。
第二幕はその学芸会のお芝居「桃太郎」がそのままステージで演じられ・・・「なんだ、これで大団円か。案外あっさり終わっちゃうなあ。でも転校していった子供たちも出てきたけど・・・???」なんて思って観ていたら、なんと!この後からが見せ場だったのだ。
完璧に演じられた学芸会の舞台は実は校長先生の夢。
実は主役の桃太郎役の子が行方不明だったり、着るはずの衣装が無かったり、殺陣役がなかなか来なくて戦闘シーンが演じられなかったり、ハチャメチャな展開が待っていた。
準備ができていないのに劇はどんどん進行していくので、そこをなんとか取り繕うためにみんなで右往左往。
完璧バージョンの後にこれを見せられる落差。
まずは、とにかく脚本がよくできていて脱帽。
登場人物も全員がとてもキュートで魅力的。
とくにアルツハイマーのおじいちゃん!認知症の役の人がこんなに可愛く見えるなんて衝撃的。
おじいちゃん役はサミー関口さん。
「絶妙な不安定感」でいつ何を言い出すか分からず、目が離せなくなる。
また、おばあちゃん役のいまむらのりおさん。
どうみても伊東四朗にしか見えない女装の強烈なインパクト。
出番が来るたび、「待ってました」って心の中で拍手してしまう存在感。
まずはこの二人に気持ちを持っていかれ、この二人とのぶつかり合いの中で他の登場人物も魅力と輝きを増していったような、そんな舞台だった。
好田タクトさんは、あまり目立ってもいけないけど目立たないとゲストの意味が無い・・・という難しい立場の中で好演しておられた。何気に指揮者芸もやってましたね。
いやーとにかく、面白かった。
最後の最後、なぜかアルツハイマーが治ってしまったおじいちゃん、普通に挨拶するだけで大爆笑。
さて、このお芝居を観ていて私は、とっても似たテイストのものを知っている気がして仕方なかった。
6月に観た「アチャラカ荘の人々」である。
いくらでもお涙頂戴にできそうなエピソードを敢えてサラッと笑いに転化してしまう軽さ。
人間の愚かさ、マヌケさに対する温かい視線。「軽くてあったかい」この感じ。
帰宅してから「アチャラカ荘」のスタッフを調べたところ、演出が「おっ、ぺれった」と同じ永井寛孝さんだった。
おお、びっくり。私、めったに演劇見ないのに、たまたまぜんぜん違うきっかけで観た舞台が同じ演出家の人だなんて!
そして、その舞台をみるきっかけを作ってくれた芸人さんが、両方とも「馬車道 おきらくシアター」で出会った芸人さん(遠峰あこさん、好田タクトさん)だったという不思議。
で、ふと最近、観ようと思っていて見逃してしまったオオタスセリさんの「普通の女」のスタッフを何気なく見たら、ここにも永井寛孝さんの名が。
単なる偶然でしょうか?おそるべし。
これは今後、要チェックという天の声ですね、きっと。
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