●2016/12/15.木三越劇場「劇団民藝/SOETSU 韓くにの白き太陽/作・長田育恵、演出・丹野郁弓」
岡町高弥
40数年ぶりに三越特別食堂に足を運び、今年80歳になられた敬愛する長野から来られたO女史と食事をして階下の三越劇場へ。極めて真っ当な観劇コースだ。
次々と若手作家を招く民藝。今回は、民藝運動の提唱者、柳宗悦の評伝劇。日本と朝鮮の架け橋になるべく奔走した半生を芝居にした。
友人の浅川伯教(塩田泰久)に呼ばれて朝鮮を訪れた宗悦(篠田三郎)は、浅川の弟の巧(齊藤尊史)や妹千枝子(石巻美香)、その夫で総督府に勤める今村武志(天津民生)、料亭の女将・姜明珠(日色ともゑ)らと知り合い、深い友情で結ばれていく。
朝鮮の民芸品、白磁の美に魅了されて朝鮮民族博物館の建設に奔走する。しかしながら、日本の朝鮮支配は日に日に厳しくなっていき、日本と朝鮮の友情にも亀裂が走る。時に大日本帝国のプロパガンダ政策に利用されるもひたむきに友情と多民族共存を願う理想主義者宗悦を篠田三郎が好演する。また、宗悦を支えながらも自己主張を崩さない妻であり声楽家であり女傑でもある兼子を中地美佐子が情感溢れる芝居で見せる。
前半は丁寧に宗悦を巡る人々を描くも後半はやや性急過ぎたせいか役者が展開についていけないように見えた。ともあれ、三一独立運動の大弾圧、関東大震災後の朝鮮人虐殺なども芝居に折り込み、今日に至るまでの日朝関係の溝もきっちり描いていた。
理想主義者宗悦の姿を最後の最後に日色が非難する場面が印象的だ。
植民地支配に友情など存在しないと。
作者、長田育恵の危機感が芝居に込められた民藝らしい正攻法な芝居だった。
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