●2016/11/24.木「燐光群/天使も嘘をつく/作・演出、坂手洋二」
岡町高弥
東京で54年ぶりの11月に雪が降った24日、燐光群「天使も嘘をつく」(作・演出、坂手洋二)を見るため座・高円寺に足を運ぶ。
外は雪だが、舞台は暑い沖縄だ。
今、現在日本で起きている「沖縄の問題」を丸ごと芝居に詰め込んだ問題作だ。
沖縄先島諸島(宮古島、八重山、尖閣)への自衛隊基地配備計画問題が芝居の形を借りたドキュメンタリーとして伝わってくる。
メガソーラー誘致計画で揺れるとある南の島。
反対派の母親たちの招きで映画監督ヒロコ(竹下景子)とカメラマンのシロサキ(猪熊恒和)は美しい島を訪れる。
ソーラー計画の裏で着々と基地誘致計画が進んでいる。それは、高江や辺野古、フクシマ、あるいは古く三里塚で起きた国家権力という暴力装置がむき出しになろうとする瞬間だ。
ヒロコはサユリ(馬渕英俚何)、ミユキ(百花亜希)、トミエ(田中結佳)ら、ソーラー反対派だった母親たち、リベラルな市会議員のサトコ(円城寺あや)、ヒロコのファンである映画館主タイラ(大西孝洋)らと共に自衛隊基地反対運動を立ち上げていく。
物語は完成しなかったもうひとつのドキュメンタリー映画の話が重なっていく。撮影中にパラグライダーで事故死した女優マナ(馬渕)を主人公にした映画「天使も嘘をつく」。
地球外生命体と戦う天使の映画。
戦前から現在にいたるまでの沖縄の蹂躙された歴史と今日、高江で起きている弾圧を芝居は余すところなく見せてくれる。
なぜ、坂手洋二がこの芝居を作りたかったのか、その切迫感が伝わってくる。
そして「非戦の決意」が登場人物の言葉を借りて次々と放たれるとき芝居は思いがけない力を持つ。
ラストシーンはきわめてハッピーエンドだ。竹下景子と馬渕英俚何が飛翔しようとする姿に天使は必ず存在するという作者の切実な願いのようなものを感じる。膨大な台詞を淀みなく語った役者全員の健闘に敬意を表したい。
それにしても、「バカを侮るな、バカは本当にバカだからな」という台詞に笑ってしまったが、この世界の戦慄すべき現実である。
|