●2016/11/4.金 三越劇場「劇団若獅子錦秋公演/沓掛時次郎」
岡町高弥
11月4日、大好きな劇団若獅子錦秋公演「沓掛時次郎」(三越劇場)へ。
長谷川伸原作、演出は劇団新国劇の創立者、澤田正二郎の演出による田中林輔。
今まで数多映画芝居になった人情芝居の原型を若獅子がやってくれた。
あらすじはこうだ。一宿一飯、渡世の義理のために三蔵(門戸竜二)を切り殺してしまった沓掛時次郎(笠原章)は、三蔵の頼みを聞いて残された女房おきぬ(二宮さよ子)と倅太郎吉(高丸えみり)の面倒をみることに。
三人はおきぬの三味線と時次郎の追分節の門付でその場しのぎの暮らしを続けていく。安宿に身を預けたはいいものの、身重のおきぬと子供のために再びヤクザの出入りに助っ人に行くことになった時次郎。
出入りがすんで戻ってみると哀れおきぬは。
義理人情に縛られ、なおも自分が殺した亭主の妻と子供のために身を捨てていく時次郎を笠原章が好演。両親をなくし天涯孤独となった太郎吉の哀しみを全身で訴えた子役、高丸えみりの上手さに舌をまいた。
長谷川伸芝居の妙味はセリフ劇にあるとアフタートークで笠原章も語っていたが、一つ一つのセリフが研ぎ澄まされていて洗練されている。いわば芝居の肝が詰まっている。役者であれば皆一度は長谷川伸の芝居を演じるべきだ。シェークスピアもいいが、日本語を使う役者は長谷川伸から始めた方がいい。
来年は新国劇百年、劇団若獅子結成三十周年だそうだ。
一人でも多くの方に見てもらいたい芝居だ。南條瑞江、市川欣弥、二宮さよ子が情感溢れる芝居を見せてくれた。
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