●2016/10/8.土 紀伊國屋サザンシアター
「劇団民藝/箆棒べらぼう/作・演出、中津留章仁」
岡町高弥
民藝と若手実力派作家の組合せ見逃す手はない。今回のテーマは「企業と家族」。
一代で街場の食堂から外食チェーン店を築き上げたオーナー社長大友(西川明)と妻、凛(樫山文枝)を通して戦後の日本を描くという意欲作。
小さな食堂から身を起こし銀行からの融資を受けるため妻をも犠牲にする。その挙げ句の果てが、家族崩壊。
一幕はホステスをやっていた妻との出会いから、会社が大きくなり家庭も仕事もねじれだしていく過程を見せる。オイルショック、バブル崩壊、阪神大震災を詰め込んでいく。
後半は、東日本大震災やリーマンショックを背景に家族の対立とブラック企業と呼ばれるようになるまでの顛末を一気に駆け抜ける。
テーマは今日的で極めてわかりやすいが、そのせいか大味でステレオタイプの人物像が多い。
登場人物がみな、一面的で葛藤がない。善悪あわせ持つ人の内面まで見えてこない。
さすがに民藝の役者陣は達者で福島の契約農家の悲劇など迫るものがある。
それだけに中津留作品としては大いに物足りない。
二幕で2時間40分、ラストシーンも腑に落ちず、もっといい終わり方があったのではないかという思いが残る。芝居にとってわかりやすさはやはり罪である。
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