●2016/10/13.木 ポレポレ東中野「クワイ河に虹をかけた男/満田康弘監督」
岡町高弥
燐光群の打ち上げでお会いした穏やかな満田監督が20年かけて心血を注いで作り上げた作品に驚嘆した。
アジア太平洋戦争中、岡山出身の永瀬隆は、「戦場にかける橋」で有名になった泰緬鉄道工事の憲兵隊通訳として駆り出される。
その工事に連合国の捕虜6万人と現地アジア人25万人が動員された。
鉄道は一年半で完成するも苛酷な労働と栄養失調、伝染病で数万人が命を落とす。
復員時に12万人の日本軍に「米と砂糖」を支給してくれたタイ政府の恩義と犠牲者の慰霊を追悼しようと永瀬は妻の佳子と二人三脚で和解事業、平和基金を設立する。
また、タイの留学生や現地の学生に奨学金を送り続けた。
タイに行くこと135回、93歳で亡くなる直前まで贖罪の旅を続ける永瀬を満田監督は永瀬夫妻の手となり足となって同行していく。まず、永瀬隆、佳子の情熱と行動力に圧倒される。自国の兵隊の骨も拾わない日本政府の無責任さを草の根から告発する。
映画「レイルウェイ運命の旅路」でも描かれた捕虜になったイギリス人エリック・ロマックスとの再会は実に劇的だった。拷問によって人間性が破壊されたイギリス人の再生は和解なしではあり得ない。
この映画は、きちんとした戦後処理をしてこなかった国への怒りと個人の戦いの記録だが、永瀬夫妻の実におおらかな人柄が魅力的でさわやかなドキュメンタリーに仕上がっている。
タイに永瀬の銅像が立ち二人の最期までキャメラは追いかける。
一人でも多くの日本人が見なければならない映画だ。
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