●2016/10/13.木 吉祥寺シアター
「谷崎潤一郎作/お国と五平、小山内薫作/息子:演出、マキノノゾミ」
岡町高弥
10月13日、日本近代古典傑作選、谷崎潤一郎作「お国と五平」、小山内薫作「息子」演出、マキノノゾミを吉祥寺シアターで観る。「お国と五平」は、歌舞伎でもよく上演される名作だ。
闇討ちされた夫の敵討ちのため、家来・五平(石母田史朗)と共に放浪するお国(七瀬なつみ)と、敵でありながら虚無僧姿でずっと2人を追いかけていた友之丞(佐藤B作)の三人芝居。三人芝居というよりは三角関係の物語。敵から慕われ、追う追われるの関係が反転していく。
何が悪で何が善か、剣の腕前も容姿も劣る男がなぜ、思慕する女性のために恋敵を闇討ちしてはいけないのか、佐藤B作の熱弁は滑稽だが、どこか説得力がある。
情けない男のなりふり構わぬ卑怯な生き方は、現代にこそ通じるものがある。
「息子」は9年前に家を出た息子(佐藤銀平)が落ちぶれはて捕吏(山野史人)に追われて火の番屋に逃げ込んでくる。そこには親父(佐藤B作)が。決して親子と名乗らない二人が他人のふりをしながら情を交わしていく物語。実の親子ならではの情感溢れる芝居を見せてくれた。
無駄のない完成度の高い古典をどう見せるか。マキノノゾミは、佐藤B作の持ち味である喜劇性を存分に引き出し、身近な芝居リアルな話に作り替えていた。秀作といっていい。なかなか味わい深い二つの舞台であった。
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