●2015/6/5.金 日暮里d-倉庫「勝田演劇事務所プロデュースNo.24/かもめ」
岡町高弥
いい芝居を見ると活力が湧いてくる。ましてやそれが名作であればなおさらだ。6月5日、激しい雨の中、日暮里d-倉庫で見た勝田演劇事務所プロデュースNo.24「かもめ」(作・チェーホフ、演出・松本祐子)は、芝居の醍醐味を堪能させてくれる傑作だった。
チェーホフの「かもめ」は「桜の園」や「三人姉妹」と並ぶ演劇史に残る代表作だが、なかなか見る機会に恵まれなかった。
それもそのはずで、チェーホフ自身が初演時不評をかってスタニスラフスキーの手によって再演されるまで日の目を見なかった「厄介な」作品だ。
舞台は別荘地、女優にその息子、女優の愛人である小説家、医師に叔父さんに息子に思いを寄せる管理人の娘、そして女優志望の娘とそれぞれぞの思惑がぶつかり合って常に不穏な空気が流れている。
舞台の上で取り立てて事件が起きるわけではない。しかし、舞台の外に広がっていくセリフが当然ながら見事なのだ。
「わたしはかもめ」、この単純なセリフを生かすも殺すも役者と演出次第だ。
役者の演技がすべての何もない幕ひとつのシンプルな舞台、加えて外の大雨も効果的だった。
息子への倒錯した愛情と大女優の貫禄を堂々と演じた村松恭子、色気のある医師を演じた若松武史、駒塚由衣、有馬理恵、石鍋多加史と達者な役者が揃っていて安心してみることができた。
ニーナを演じた藤崎あかねはなるほど文学座らしく若き日の杉村春子を彷彿とさせた。いい配役にきめ細かい演出、企画製作の勝田安彦に拍手を送りたい。
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