●2015/3/6.シアタートラム「砂の骨」
岡町高弥
骨太な作品を量産し続けると評判の中津留章仁率いるトラッシュマスターズ第22回公演「砂の骨」(作・演出、中津留章仁)を3月6日、シアタートラムで見ることができた。
舞台は外食産業。
正社員店長に抜擢された三枝(倉貫匡弘)は今まさにベテラン派遣社員(キャストと呼ばれているが気色悪い言葉だ)杉城(安藤瞳)を自主退職に追い込め、さもなくばヒューマンスキルが減点されて賞与がカットされるぞ、と現店長の角田(高橋洋介)に恫喝されている。
家に帰れば別居した姉が身を寄せている。
隣の公園では浮浪者がひとつのコミュニティを作っている。
その一人大和(上田悠介)は大声で「世界を変えろ市民よ立ち上がれ」と叫んでいる。
出会うはずのない店長と浮浪者が従業員の過労死、派遣切りをきっかけに絆を深めていく。
孤立する三枝に組合の作り方を教えて外食産業に労働組合が誕生する。
姉は高知にいる夫となぜ別居にいたったか地方の貧困事情がつまびらかになっていく。
物語は市民派誘拐組織や行方不明の兄が現れ、どんどん螺旋状に広がっていく。
エリート店長と思われた角田も会社から責任を問われ陰湿な指導という名のいじめにあう。
いくつかの決定的な場面で「砂の骨」が降ってくる。
粗っぽい展開も多いが、現代の貧困と真正面から取り組む姿勢は神々しいものがある。
「プロレタリア演劇」と呼んでもいいだろう。
「貧困は狂気だ」と言うセリフがいい。
演劇で世界を変えようと言う強い意志を感じる芝居だった。
中津留章仁、ただ者ではない。
「貧困」が芝居のテーマになる時代がこようとは。
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