●2016/2/18.木 紀伊國屋サザンシアター
「劇団民藝/光の国から僕らのために金城哲夫伝」作・畑澤聖悟、演出・丹野郁弓
岡町高弥
意欲的な芝居を上演し続ける劇団民藝「光の国から僕らのために金城哲夫伝」(作・畑澤聖悟、演出・丹野郁弓)を観るため紀伊國屋サザンシアターへ。
民藝とウルトラマンの生みの親、円谷プロ全盛期を担った金城哲夫の組み合わせ。
これを見ない手はない。
物語は自衛隊のヘリコプターに乗った金城哲夫(齊藤尊史)のラジオ中継から始まる。
後ろには現在の上原正三が乗り合わせている。折しも沖縄本土復帰直後、金城はラジオで自衛隊を礼賛し袋叩きにあってしまう。
金城哲夫の陽気さ明るさ、その裏の哀しみを評伝形式で綴っていく。
ウルトラマン誕生前夜、のちに怪獣ブースカや秘密戦隊ゴレンジャーを作り出す郷土の先輩上原正三(みやざこ夏穂)を強引に円谷プロに引き入れる。
円谷プロ社長円谷一(千葉茂則)と三人でウルトラマンを生み出すまでの熱情は物語の白眉になるはずだが、さらりと終わってしまう。せっかくの友好珍獣ピグモン登場が生かされない。
後半は金城哲夫が沖縄に戻って沖縄海洋博をプロデュースするも地元民と東京の大手広告代理店の板挟みになって悶絶していく。
500万人を見込んだ博覧会は300万人の入場者で失敗に終わる。
沖縄にウルトラマンは最後まで現れず、酒に溺れていく。
37歳の生涯はあっけなく幕を閉じる。
ウルトラマンの世界とは地球が一つになって外の世界と戦う話だ。
その地球でいまだに戦争が終わらない。金城哲夫の求めた世界は未完成なのだ。
ウルトラマンに「お前は地球人か人間か」と迫るメフィラス星人や侵略された哀しみを描いた名作「ノンマルトの使者」など金城哲夫の沖縄を想わせる作品は数多い。
観客の誰しもが思ったことだが、ウルトラマンの作品と金城哲夫の世界を重ね合わせた芝居を見たかったが、余りに実話にこだわり過ぎたせいか「知ってるつもり」になってしまった。
円谷プロのその後の波乱を知るものとして、円谷プロの世界だけでも良かったのではないかと思ってしまう。
題材が余りにも魅力的だけに物足りなさが残る。
ともあれ、民藝の試みはあっぱれだ。
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