●2015/12/24.木「劇団SCOT/鈴木忠志の世界」
岡町高弥
12月24日、今年で年末恒例の吉祥寺シアターが最後となる劇団SCOT「鈴木忠志の世界」に駆けつける。
この日の演目はギリシャ悲劇「エレクトラ」。
「エレクトラ」は父親が母親クリテムネストラ(エレンローレン)に殺されたため母殺しに執念を燃やす物語だ。実の母親を弟と共謀して殺す。なんとも救いようのない芝居を鈴木忠志は病院に閉じ込められた病人の妄想と読み解く。
冒頭、車椅子に乗った5人の男たちが現れ、力強く足踏みをしながら舞台を駆け巡る。その鍛え上げられた肉体に目を見張る。彼らはコロスであり、エレクトラの内面を語る語り部である。
最初から最後まで高田みどり生演奏の打楽器が激しく打ち鳴らされる。クリテムネストラの独白が圧倒的だ。
元オリンピック選手だったという60歳を越えるエレンローレンの声と肉体。鈴木メソッドの集大成であろう。
鈴木忠志が終演後、この日「シカゴ」公演で来日し観客席にいたミュージカルトップスター、トム・ヒューイットとエレンローレンが鈴木メソッドの優等生と語っていたが、彼女の空間支配力を目の当たりにしただけでも見た甲斐があった。
役者は優れたアスリートでなければならないという、鈴木忠志の思いがよくわかる。人間の情念や復讐心などギリシャ悲劇の時代と何ら変わらない。その普遍性、狂気を見せることが演劇の使命であり演劇の思想だという願いが結実した舞台であった。
演劇を通して世界を変革する、齢76の鈴木忠志の闘いはまだまだ続く。
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