●2015/11/13. 下北沢ザ・スズナリ
「劇団ハートランド第19回公演/脚光を浴びない女」(作・演出、中島淳彦)
岡町高弥
いつも笑ってほろりとさせられる、女性だけの演劇集団、劇団ハートランド第19回公演、「脚光を浴びない女」(作・演出、中島淳彦)を見に11月13日、下北沢ザ・スズナリへ。
舞台は築50年の団地。
近所付き合いの濃厚な団地生活はそのまま日本の縮図だ。
主人公の秀子(小林美江)は変わらない日常を変えるため母親からもらったお金でエレキギターを買おうとしている。その秀子の部屋に団地の住人が次から次へと集まってくる。娘に振り回される女、夫の介護に疲れ果てている女、バイト先の女、夫をはねて交通刑務所に入っていた女、最近、団地に引っ越して来た女、いずれも「困難」を抱えながら懸命に生きている。
そこに九州に住む母親(矢野陽子)が突然現れる。
団地取り壊し問題が表面化し、にわかに穏やかだった団地生活に亀裂が走る。母をもて余す娘に居場所のない母親。一緒に暮らす寝たきりの夫を餓死させてしまった妻。平凡だと思っていた暮らしにはさまざまな「顔」があった。ギターを始めた秀子はついに団地でバンドまで結成してしまう。
「私のことは気にせんでいい」と田舎に帰っていく母娘の別れが切ない。
たどたどしいながらも精一杯歌い上げる、出演者全員の演奏カーテンコールが痛快。
やがて団地もなくなり、近所付き合いも共同体も消えていく。
日常生活が壊れていく刹那を上手く人情喜劇に仕立て上げた。
さすが劇団ハートランドだ。
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