まりしろ まりしろ まりしろ まりしろ まりしろ まりしろ まりしろ まりしろ まりしろ まりしろ まりしろ まりしろ まりしろ まりしろ

 
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2013年03月06日(水曜日)
(その9)20年続く駄句駄句会句集「駄句だくさん」発売記念「寄席 だくだく亭」
 
 今回ほど、ほんとに「誘っていーもんかどーか」と心の底から思うことはありません、と言いつつも。
 ほぼ月に一度、神楽坂という風趣ある町で、気がついたら20年以上続いている句会があります。思わず、落語の演目「だくだく」を思い浮かべてしまう名称の「駄句駄句会」は、御隠居が山藤章二宗匠ならば、熊さん八つあんは、タレント、放送作家、作家、落語家、電波会社社員、短歌人、ガラス屋店主、もと議員、演芸企画会社、ゆるゆる司会者、寄席文字橘流、役者、散歩人、プロデューサー、ら。
 あらためてこう肩書きを並べてはみたものの、一人でいくつもの肩書きを担う長屋の連中、この世をあれこれしながら不敵に渡り歩く輩です。
 いま、俳句人口はかなりのものらしく、一句詠みたい人たちが日本にはこんなにもいるのかと驚くばかりです。
 かくいう私も、お声がけいただいたものの、題を出されてもし何も浮かばなかったらどうなるんだろう、どんなお仕置きが待っているのかしら、の危惧なんて雲散霧消、馬鹿馬鹿しいにもほどがある。
 みなそれなりに一家言ある一国一城の主、ちょっとしたことで喧嘩が勃発してもなんら不思議はない面々。
 共通項はと言えば落語好きであり談志ファンということでかろうじて東西南北統一されて現在まで無事存続しております。
 麻雀やゴルフや将棋と同じで、句には性格が出るから面白い。
   
 
   ルールは、季題二つ。
 前回の最高得点者が季題を出します。
 宗匠の素晴らしい筆による季題に、締め切り時刻が書き添えられた紙が、張り出されます。
 各自、句を一つずつつくり、渡される白くて長い紙に書いて提出。
 締め切りまでは、ほぼ2時間。
 その間、無駄なおしゃべりが延々続き、落語にも出て来る贅沢の極み、刺身と天ぷらと鰻をつつき、ビールや日本酒やウーロン茶や珈琲や煎茶を一杯やりながら句をひねり出します。
 提出された句をまぜてランダムに紙に書くという大仕事をこなすのは番頭さんもしくは年下メンバーのお役目。
 作者不明でずらりと張り出された句に、各自「天」「地」「人」の順番で気に入った句を選び発表、選ばれた句の人は名乗りをあげ、「天」の句は短冊に書いて祝儀とともに作者に進呈するという決まり。
 「虫」は、最もくだらない句を選びます。
 この「くだらなさ」がむずかしいところで、あまりのくだらなさ加減に「天」よりもその場を一挙にさらってしまったりもするので、これはこれで憧れの的になり、一筋縄ではいきません。
 天は3点、人(じん)は2点、地は1点、虫は-1点で点数を競います。
 ただーし、虫が三つたまるといきなり天一つに昇格するので、最初から虫狙いで句をつくる輩もいる句会。
 もう一つ、この句会に特有のルールに「馬」があります。
 最高得点獲得者と最低得点獲得者の2人を推理するという遊び。
 みなの顔色伺いながら、この題ならあの人が得点するんじゃなかろうか、今日はひどい二日酔いだと青い顔色のあの人は案外こういうときにいい句ができるはず、最近幸せすぎるアイツは点数最低だろう、などの無責任な予測も楽しく、いい大人がワアワア言うとりまっせ(と、急に上方弁やがな)。
   笑いのプロ、喋りの達人が勢揃いしているだけに、毒吐き放題、冗談の応酬が続きます。
 間をみつけてうまく会話の流れにのっていくには3年はかかります。
 聞き逃すのが惜しいので、会話に耳を傾けつつ、ときには相槌も打ちつつ一句もつくる多用脳を育てなければなりません。
   私はかつて「東京かわら版」で働いていた頃、「かわら女(め)」という俳号を頂戴し、その後、猫をかわいがってるということで「寝ん猫」になりました。飼ってた猫が20歳であの世へ逝っちゃったけれど今んところそのままです。
 ちなみに私の句の特徴は「説明を聞くとますますわからない」「字余り句」「カタカナ多用句」「呼び掛け句」などの評判を得ております。江戸の風が全然吹かない句しか詠めない無粋の極み。が、自分では好き勝手に詠んでるからこれでいいのだ。
 20年の間に亡くなった同人、玉置浩さん、横沢彪さんも晩年はここで楽しく遊んで逝かれました。「こういう会話がしたかったんです」と句会で嬉しそうだった玉置さん、癌になってからは隅の方で自分で薬を打ってらした横沢さん、ぎりぎりまで句会に参加なさってお過ごしでした。「こんなにもらっちゃうんだよう」と薬がいっぱい入ったスーパーの袋のようなのをカシャカシャいわせて通われていました。
 そして去年は、あわやと思われた高田文夫さんが見事に生還復帰。
   そんなみんなの句から宗匠が抜粋して掲載、みなのツッコミも入った句集「駄句だくさん」(講談社刊)が出てしまいます。最初は、半信半疑だった面々も動く宗匠に触発されて、ひょっとして売れるかもなどと山っ気も出て来て、妙にはしゃいだり、熊さん八つあん、お崎さん、お光つあん、華やいでます。
 じゃあ、出版記念会をやっちまおうということになりました。落語家もいることだし、ものまねキッチュ(松尾貴史)もいることだしと、とんとん拍子。
 さて問題はお客様。
 去年は、高田さんの肝入りで、都はるみさんが御出演で話題性充分。
 さて今年はどうでしょう? その場で題をもらって句をつくるという生句会もあるというから今からドキドキ。
 冗談まじりの馬鹿な句会をのぞいてみようかと言う奇特な方、これを契機に俳句でもひとひねりしてみようかのきっかけづくり、テンションをあげようと言う方は、紀伊國屋へ足を運んでみます?
 林家たい平さんと左談次さんの落語に松尾貴史さんのトークもついてるので、決して御損はさせません。お遊びがてらお越しくださいませ。
 
 
<誘っていーもん度(100点満点で)>
定年後、しょんぼりテレビと近所の喫茶店で過ごすお父さんを 160
「あなたにはユーモアが欠けてるのよ」と妻から言われた上司を 135
松尾貴史って昔はキッチュって呼ばれてたんだよとプチ自慢の彼を 100
林家たい平って山藤章二の後輩らしいな、とミニ情報で得意な後輩を 180
いい句が詠めないとお嘆きのおじさんを 230
老後の過ごし方が今から心配な中学生を 50
 
●2013/3/25(月)「寄席だくだく亭」 「駄句だくさん」(講談社刊)出版記念
開演:18時半
内容:落語とトークと公開句会
出演:落語・林家たい平、トーク・松尾貴史、落語・立川左談次
公開句会参加者:三魔/山藤章二、野ざらし/野末陳平、風眠/高田文夫、駄郎/吉川潮、斜断鬼/左談次、吃宙/松尾貴史、寝ん猫/木村万里、邪夢/島敏光、中瀞/林家たい平、片°銀/高野ひろし、媚庵/藤原龍一郎、粕利/橘右橘
会場:紀伊國屋ホール
料金:4000円(全席指定)
予約:03・3354・0141 キノチケットカウンター(席が選べます)
お問い合わせ・予約:03・3801・6799 大有企画
「駄句だくさん」(山藤章二・駄句駄句会編)
発売日:2013年3月21日(木)
予価:1365円(税込み)
 
 
2013年02月12日(火曜日)
(その8)松元ヒロ、たった一人で喋る、だけなのに。
 
ライブを御紹介するのに一番気を遣うのは、発信する時期ですね。
今までにないスタイルで新しい事をやり始めたときというのは、出演者も試行錯誤で闘っている。
そういうときは、数少ないファンが見届けてくれる。
模索時期だから、ときには失敗もある。いや失敗かどうかは誰にもわからない。
(後に、それを失敗とするかどうかは、演者にかかっている)
けれども、たまたまそこへ、試みた方向と相性がよくない方が御来場なさった場合、そのときのお客さんは「知らない」から「一度見た」という体験があるだけに、「懲りた」となり、二度と見に来ない可能性が高まる。
ライブを月に何本も見届ける習慣の人であれば、このときはたまたまこうだったのだな、と寛容になっていただけるのだけれど。
こういう時期の発信はむずかしい。
お客さんがどんどん増える時期というのは、ライブの方向も決まり、本人も自信をもって舞台をつとめ、その勢いが客席にも伝わり、お客様も知り合いを誘いやすくなる、そうなるとしめたもの、すぐに2倍3倍になっていく。
誘った人も嬉しくなる。
ね、いいでしょ、言った通りでしょ? ほんとね、ありがとね、教えてくれて、という善の連鎖。
この時期の発信が一番楽だ。
が、今度は、常連のお客様相手に長く続けていると、双方が慣れてきて舞台とお客様との蜜月が去る。
お客様は、私が誘わなくても、お客さんがたくさんいるのだから、と安心し、あまり誘っても、自分のお席がなくなるとかえって困るしさ、と。
さあ、ここでまた試練の時期がやってくる。
舞台は面白いのに、チケットとれない噂が先行した結果、実は観たい人たちが、どうせチケットとれないんだから、と自主規制してしまう。
もったいないですねえ。
 
山田雅子撮影
いま、この状態にいるのが松元ヒロさんです。
ふふふ、もってまわった方法でおすすめしてみました。
ここで、出番かと今更おすすめするのもおかしいくらいなんだけど、強くおすすめを発信。
客席の新陳代謝をどうすすめるか。
ファンがどう知り合いを誘ってくれるか、知り合いを誘ってくれるお客さんをどう引き寄せるか。
特に松元ヒロさんの場合は、覚悟を決めて思想の方向を明確にしているので、ライブを続けていくためには、ファンが知り合いを誘うことが非常に重要な要因となる。
誘ってこそのファンだと自覚を促したい。
思えば、笑パーティのころ、ザ・ニュースペーパーのころ、大久保でライブを行っていたころ、いろんな変遷を観てきただけに、いまこそ、松元ヒロ、見頃です!と言いたい。
もの言う芸人、もっと増えてもいいのに。
あれほど腰低く、逡巡を示しながら、愛想を振りまきながらの喋りであってすら、過激というつまらない二文字のラベルを貼られてしまうなんて。
テレビに出られないこと、いな、出ないことは今や松元ヒロさんにとっては勲章になっている。
そもそも芸能は権力という中心からはずれた周縁からこそ生まれたものなのだから。
芸能のほとんどが若年者向けであった時代から、ようやく、大人向けになるチャンスが巡ってきている。
もの言う大人の芸能がいま根付かなければ、日本は縮こまる。
だから、ヒロさんの仕事が増えるとか、売れるとか売れないとかは関係なく、松元ヒロ舞台を見る人が増えなければ、おかしい、と思っている。
こういう理由によって、お誘いする次第です。
えらく硬いもののいいようになったけれど、笑えます、泣けたりもします、たった一人が90分から120分、立ってただしゃべるだけなのに。
落語のような連綿と伝えられた形式もなく、ジャンルもない。
自らつくった形式、ジャンルで勝負する苦しい戦いが続く。
同じ方向で舞台に立っていた大先輩、マルセ太郎さんのことを書くスペースがなくなってきました。
それはまた今度。
めざせ、紀伊國屋ホール。
土日はチケット完売でも、木金の平日はまだチケットあると聞きました。
今なら、まだ、間に合うはず! GO!
 
 
<誘っていーもん度(100点満点で)>
高校卒業の娘と息子に、社会に出たら偏差値関係ないからねと 150
真っ向から運動にのめりこみちょっとお疲れ気味の友を 200
マラソン選手に、この人も昔は走ってたのよと 100
鬱屈したこの世の中に意気消沈しているお父さんを 180
長いおつきあいの末ようやく婚約にこぎつけた彼女と親を 160
「笑パーティー」時代のヒロさんを知る演芸仲間を 170
 
●2012/2/21-24 木金土日「松元ヒロひとり立ち」
新宿紀伊國屋ホール 21、22日(19時~) 23、24日(15時~)3300円
0570・00・3337 サンライズプロモーション(10時~19時)
 
 
2013年01月10日(木曜日)
(その7)今日も御機嫌運動、ハッチハッチェルバンド
 
2013年、もう10日も経っちゃった。
 
10日と言えば、寄席で言えば上席(かみせき。1~10日)の最終日になります。
おめでとうございます、と、寒中お見舞い、と、鬼は外~福は内~、をこの際いっしょに申し上げておきましょう。
メールを送るたび、いつも最後に「体第一に!」と書いて来ましたが、今年は「心と体を第一に!」にしたいです。
もっとも、心も体の一部ですけどね。
心を健康に保っていないと、体にも悪影響。
だから、「今日も御機嫌!運動」を提唱したいと思います。
そのために、まずは自分を御機嫌にしないとね。
落語には、つくづく人間関係を上手にこなしていく智恵が詰まっているよなあと思いますが、バンドでそれを感じさせてくれるのが、ハッチハッチェルバンドです。
 
 
会場を埋め尽くしたファンは、リーダーであり、ボーカル、作詞作曲、ギターからバンジョー、ジプシーバイオリンまで演奏、合間のMCを抜群のエンタテイメントで見せるハッチさんが「ハッチェルハッチェル」と言うと、一斉にある謎の行動を始めます。
 
さて、それはなんでしょう?
まず、両手の指でキツネを作ってください。
そう、親指と中指・薬指をくっつけて人差し指と小指を立てるしぐさです。
ハッチ大将の「ハッチェルハッチェル」に合わせて、キツネの手を前に押し出し、キツネの口を「チェル」の箇所で2回開くのです。
 
できた?
できたら、あなたもハッチハッチェル御機嫌運動の仲間入り。通称ハッチさんの本名は八馬(ハチマ)さん。なので、呼びやすくハッチさんになり、さらにふざけてハッチハッチェルに進化、バンド名になったのではないかと勝手に推測。
 
バイオリン片手に、黄色の眼鏡に山高帽、スリーピースに長靴、という怪しい格好で現れ、ライブの最後になると、これがカッコよく見えて来るから、ハッチ洗脳力恐るべし。
バックバンドの編成は、ギター、ベース、バンジョー、ドラム、にかわいらしい女性アコーディオン奏者。
 
全曲、人生を全肯定、愛の讃歌。
と言っても、くだらな系だから、真面目に構えることはありません。「調子っぱずれに祝福あれ」ですから。「できそこない行進曲」に「つなわたりの歌」ですから。
 
演芸的に見るなら、人の心をすかさず掴みとる話芸、気をそらせない丁寧なおもてなし、言葉とリズムと体技で笑いの渦に巻き込むハッチ忍術、ここにあり。
コールアンドレスポンスの嵐。
「ウンコ!」とまで言わされて、それが汚らしくないから不思議なんです。
 
バンドの中で紅一点の藤田まゆみさんのアコーディオン弾き語りの歌「ハングリー精神のうた」では
 
「ハンサムでも 頭よくても 足が速くても
ハングリー精神が なければゴミ同然
お金持ちでも 背が高くても 高学歴でも
ハングリー精神が なければクズ同然
<中略>
不器用でも つまらなくても いいことなくても
ハングリー精神が あれば大丈夫 そこが大好きよ」
 
と歌います。
 
「人生を楽しく生きる一流の男、デタラメインチキおかまいなし、クダラナの神に愛された心震わす底抜けメロディ、人生讃歌、歓びの演奏に愉快でナンセンスなステージショー! 神出鬼没な天才ハッチハッチェル率いる6人組素晴らし系楽団」
こんなキャッチフレーズを耳にしたら、さあ、もう行かないわけにはいかない貴方。
いよいよ、年に一度の渋谷クラブクアトロライブが始まります。
そこの落ち込んでるお兄さん、気分サイテーの女子、連れ立って行っておいで、お母さんは嘘つかないから。
 
 
CD「理由なき祝宴」の裏と表
 
 
<誘っていーもん度(100点満点で)>
就活うまくいかなくて、俺なんかどうせダメだよとうなだれてる奴を 200
姪っ子や甥っ子にお年玉すら渡せないとじんわり目尻に液体流れるおじさんを 180
冗談についてけない、仲間はずれを恐れる疑心暗鬼な彼女を 150
正月に久しぶりに顔を合わせて喧嘩が絶えない陽気な家族を 130
スポーツ万能、高学歴、モテすぎてこの先どうなるか怖いというアイツを 30
いまひとつ距離が縮まらない、職場で三つ机が離れた同僚を 100
 
●2013/1/28.月 「ハッチハッチェルバンドワンマンショー」
19:30~/渋谷クラブクアトロ/3500+ドリンク500/03-3477-8750渋谷クアトロ
PS:↓「あやしい3人組」とあるのも、どうも、ハッチさんじゃないかというもっぱらの巷の噂……
●2013/1/13.日 「海を越えて50年バラエティショウ/上を向いて歩こう」
14:00~/永六輔、松島トモ子、村上雅則、村上ゆき、ソノダバンド、あやしい3人組/6000、6500/1ドリンク付き/赤坂ブリッツ
 
 
2012年12月07日(金曜日)
(その6)今年もあります!「♪年忘れ市馬落語集」
 
去年、3・11以降、笑いのライブはどうなるのかと思って見ていました。
昔、笑ってる場合ですよ、というテレビ番組がありましたが、「笑ってる場合じゃないですよ」という空気。
 
それでも、東北大震災が起こったすぐの頃は、お通夜躁病(親しい人の死は悲しいには違いないのだけれど、直後は無理にはしゃいでしまう状態)に似て、気分が高揚、こんなときこそ笑って平常心にもどらなきゃとばかり、平静を装うことに神経を使い、気張っていたように思います。
こうなった原因を分析すればするほど、打ちのめされたり、怒りが沸き起こったり、を繰り返し、そのうち強い感情の波を受け入れることにくたびれていきました。
 
演者の方々も、仕事のキャンセルの知らせが入るたびに落ち込み、笑いは悲惨な状況に陥ったときに果たしてどれだけ力になれるものなのかと無力感に苛まれたこともあったようです。
客席の後方からお客様の背中を見ていると、思わず、元気出してください!と背中を叩きたくなりましたが、いや、いま、みなさんは疲弊しきっている、背中を叩いてる場合じゃなくって、さすってあげないといけないんだなとつくづく思いました。
進取の気性に富む笑いを味わうより、やさしくやさしく気持ちをなでていかないと、と。
ささくれだった気持ちをやさしく丸くする芸が求められているのかも、と。
笑いは微妙なものです。
人によって笑いが違うとはよく言われることですが、私は、「とき」によって笑いは違うと思うようにしています。
同じセリフや動きであっても、一人の中でも、笑えるときと笑えないときがあるからです。
人は変化する。
年末は、ゆく年来る年を思い、内省的になる時期です。
ここはひとつ、みんなで一緒にあたたかい笑いに包まれにいきましょう。
そして歌いましょう。
 
山田雅子
 
体温が恋しい季節、やさしい気持ちになれる落語と歌の時間、と言えばこの人。
落語協会副会長の役職にありながら、懐メロを歌わせたらこの人の右に出る落語家はいない柳亭市馬さん。
左に出る落語家もいない!と断言してしまう。
落語はおおらか、なにがあろうとどーんと引き受けて、舞台をおさめてくださる。
その人柄を見込んで、副会長に任命した小三治会長の慧眼を思います。
市馬落語を聴くと、どうしようもなく人が好きになる。
クリスマスが終わると気持ちは新たな年に向います。
そんな12月26日、中野に向いましょう。
人を好きになって新たな年を迎えましょう。
 
同じ高座に座るのは、立川流の若き獅子・立川談春、小三治会長に認められ飛び級で真打昇進した春風亭一之輔。
前半が落語であったかく笑って、後半は、じゃーん、「昭和歌謡大全集」ときましたよ。
クミ伊藤とニューサウンズオーケストラの演奏をバックに歌いまくるという年忘れ。
市馬さんときたら、れっきとした歌手協会会員でもあり、中山大三郎作詞、船村徹作曲「夜行列車」、藤間哲郎作詞、真木陽作曲、高田弘編曲「別れの波止場」を歌い込んだCDも出したばかりなのです。
 
 
師匠柳家小さんは落語より剣道の稽古場でいそいそ、弟子の市馬は落語より昭和歌謡にいそいそ、と師弟そろって、玄人裸足の趣味を持つというのも面白く。
ここに、若いのに、あらまあ「よみがえる歌声/昭和歌謡黄金時代」という本まで出した林家たけ平も加わり、ホール全体が熱く昭和の匂いに包まれることでありましょう。
チラシには、いつもは御簾内で出囃子を弾く恩田えりおっしょさんの名もあるので、いったい何が繰り広げられるのやら。なにはともあれ、とびきり愉快な時間に浸って今年を終えましょう~。
もし面白くないというお客さんがいらしたら入場料はお返しします、と私は言いたい。
それにしても、なんで、市馬さんが紅白から声がかからないの!?
 
 
<誘っていーもん度(100点満点で)>
燃えないゴミの出し方でいつも文句言う近所のおばさんを招待しとく 130
いつもおばさん仲間で旅行やランチ、相手にしてくれないかみさんを 160
いつも無理な納期の仕事を頼み、すまないなあと思ってる下請けさんを 150
平成生まれなのに、白黒映画に興味を示し出した姪っ子甥っ子を 80
ディズニーランドをおねだりしたらシブった富裕層のお客様を 120
談春さんの軽い落語も聴きたいわ、という談春ファンを 70
 
 
●12/26.水「年忘れ市馬落語集」
<第一部>落語競演○春風亭一之輔、柳亭市馬、立川談春
<第二部>昭和歌謡大全集○~新曲発表会~市馬、ゲストコーナー林家たけ平
     演奏:クミ伊藤とニューサウンズオーケストラ 三味線:恩田えり
なかのZEROホール 18:30開演
S席4000円、A席3500円
03・5721・5335オフィスエムズ
 
 
 
2012年11月13日(火曜日)
(その5)いかにも東京!日替わりシャッフル笑いの大人ライブ「渦30」
 
落語もお笑いも演奏も、昔の事を思えばライブが本当に増えました。
30代のころ、こんなことを考えていました。
ひょっとして、50になっても60になっても笑いのライブを続ける人が、もし、もしいたら楽しいだろうな、と。
30代にとって、50、60代は正直おじいさんおばあさんであり、それは夢のように思えました。
そんなことあるわけないよとうつむいていました。
 
その頃、笑いと言えば、この東京にあっても、テレビ全盛で、ライブなんて皆無だったんです。
落語にしても、今のように、前座や二つ目の会を他人が主催してくれてお客さんがいらしてくださるようになるなんて思いもしなかった。
たとえ真打ちでも300人集めるのは至難の技でした。
小朝をコチョウ?と聞かれ、志の輔をシノホ?と尋ねられた時代でした。
それが今のようにライブ全盛になったそのわけは、機器の発達も大きいです。
集客に、ネットが使える、チラシが簡単につくれるようになった、TwitterやmixiやFacebookもある。
それらの後押しを受けながら、やはり第一は、直接人の声が聴け、体温を感じられる味わい深さにみなさんが気付きだしたからでしょう。
ライブは、お客さん一人一人がそれぞれに違う楽しみ方を味わえる。
レンズの意思がある画面とは違うから。
「こう見ろよ」と強制されないから。
落語会を主催制作する方の種類も増え、幅広いお客さんが集まり出している落語界。
落語の世界は面白きゃあなんとかなる状態になっているような気がします。
 
ところが、落語以外の演芸、大道芸、音楽家、名付けようもない芸のある人たちの舞台を一堂に目にする機会があんまりない。
あっても、ファンの集まりになってしまってお客さんに広がりがなくなる。
お客さんが固定化してしまうと、芸が狭くなってくる。
新しいお客さんが入って来づらい雰囲気になる。
 
なら、いろんなジャンルの方々を一気に見られる機会があればいいと始まったのが「渦」という名前の日替わりシャッフルライブ。
 
 
舞台も日替わりシャッフル、客席も日替わりシャッフル。
舞台もお客さんもまじりあって、いい「渦」トーンを醸し出す。
かたくなな気持ちを解きほぐし、新たな発見ある笑いのドリルライブ。
なんか、面白いことないかなあ、とクンクンしてる人にはうってつけ。
音楽あり、コントあり、ドローイングシアターという映像付き絵描きパフォーマンスあり、落語あり、トークあり、三味線にアコーディオンにかんから三線にパントマイムにエトセトラ。
いろんな個性が集まって、新たに醸成される「渦」空気は必見です。
どれか一つでもお気に入りがみつかれば、それぞれの方を追っかけるのも一興。
もしくは、ちょっと身を引いて全体が醸し出す絶妙空気を鼻で舌の上で転がす楽しみ方もございます。
 
笑いは一色じゃないからこそ面白い。
やわらか頭、やわらか肌をつくるには、やわらか舞台を見ないとね。
気持ちのアンチエイジング、したいならまずは「渦」。
会場である、しもきた空間リバティは、80人も入ればいっぱいのかわいい空間。
小田急線と井の頭線の交わる駅、下北沢南口から歩いて1分以内にあるビルの4階(エレベーターあり)にあります。
 
 
<誘っていーもん度(100点満点で)>
テレビってつまんないじゃん、と日頃から不満顔の辛口な貴兄に 200
返却期限が過ぎても、やさしく微笑んで受け付けてくれる図書館の方を 150
商業演劇の通り一遍な感じに飽きてる方を 120
文句ばかり垂れる部下に憤りを感じている上司を 120
目下、韓流にはまってるお母さんを 60
運動に入れ込みすぎて、ちょっとくたびれてる方を 95
もう一歩踏み込んだ仲になりたい彼や彼女を 90
家族で一緒に御覧になってあとで感想言い合うのスペシャルOK 100
 
 
【渦30】 11月22日(金・祝)~25日(日)
下北ごっちゃボードヴィル。テレビじゃ見えないものがある。すぐそこに人がいることの贅沢を。誘っていーもんかどーか?いいんです!落語にコントに歌と演奏(かんから三線、アコーディオン、ギター、三味線)にドローイングシアターにマイムにトークにエトセトラ、ジャンルシャッフルライブです。
 
会 場 しもきた空間リバティ 03-3413-8420
(下北沢駅南口、マクドナルド左下下る、ABCマート4F)
料 金 3000円(11/22.23「凪渦」は2500円) /自由席/予約者優先入場
当日受付開始は開演1時間前、開場は開演30分前
予約問合 件名「渦30予約」で、uzusangyou@mac.com もしくは 03-5856-3200渦産業 まで。 公演名、日にち、お名前、枚数をどうぞ。
 
●11/22.23木夜、金祝昼夜「ナギ渦」3公演
ナギプロ・パーティ×夜ふかしの会コラボライブ 『夜ナギ~パーティすぎて明日はお寝坊~』
 
●11/24.土昼「鉄渦8」
古今亭駒次、ダメじゃん小出、寒空はだか
 
●11/24.土夜「喋り渦4」
林家彦いち、山田雅人、松元ヒロ
 
●11/25.日昼「ほぼ男渦」
キン・シオタニ、ヨージ、遠峰あこ、岡大介、さこ大介、ナオユキ
 
●11/25.日夜「ほぼ女渦」
恩田えり、加納真実、柴草玲、楠美津香、上野茂都、だるま食堂
 
 
 
2012年10月12日(金曜日)
(その4)春風亭一之輔の船出を、この目で
 
秋は1年のうちで一番、催し物が多い季節です。
あれやこれや、おすすめしたいものがたくさんありすぎて正直パニックです。
その前に、前回おすすめした「メルシー兄弟と従姉」、下北沢440、最高でしたがな。
本音を言う時は大阪弁になりまんねん。
ずっとの御贔屓さんは、何も知らない人に対してはどうしても不親切になります。
わかりすぎて言葉が足りなくなるんです。
いつも戒めてはいるのですが、初めて会ったときの衝撃は時間が経つにつれて忘れていってしまうんですね。
だから、ここに、「メルシー兄弟と従姉」デビューをした古参OLさんの感想のページをリンクさせておくのにとどめておきましょう。
まりしろ「グランド」にてお読みくださいませ。
大変にクオリティの高い音楽をなさってる方々なのに、演奏を「だしもの」だなんて言って面白がってる。
そこに、よくテレビタレントが自らを「いろもの」と言いながら卑下するような媚はなくて、知性があるから素敵なの。
(ほんとのいろものさんに対してだって失礼じゃないか、とテレビ番組に突っ込んでたことあり)
来年もあるようなので、今度はぜひ御一緒しましょうね~。
一昨日は、「我らの時代、落語アルデンテ」の5回目を見て、あまりに面白かったのでそのまま帰れず深酒をしてしまいました。記憶にないくらい、というのは久しぶりだなあ。
おかげで昨日はほぼ絶食状態、梨とトマトで一日しのいでおりました。
なので、今のこんな時間(夜11時)にピザを食べる事をゆるーす。
 
 
さて、今回おすすめしたいのは、なんだか間際になってしまいましたが、きっと大満足していただける落語会です。
場所は、銀座なので交通の便もいいし、お誘いしやすいことでしょう。
誘いやすさで言えば今回が一番かも。
すでに、ニュースでも御存知でしょうが、この春、二つ目という身分からめでたく真打ちになった春風亭一之輔さんの落語会です。
実は、木村、一之輔さんがまだその名前じゃないころ、日大のオチケン時代を見ているのでした。
大阪市立大学を2回落ちて諦めた私は大学のキャンパス知らず、江古田校舎の中に入れるという好奇心も手伝って、日大のオチケン「追ん出しの会」という名の落語会に行ったのでした。
なぜわざわざ、の理由は、たまたま知り合った大学生が、いまの一之輔さんの大ファンで「素敵な人がいるんです」と何度も聞かされていたからなのです。
いくら誘われても仕事との兼ね合いでなかなか行けなくて、「万里さん、もう卒業するから今度が最後なんです」と言われて、彼女が熱をあげてるのはどんな奴なのか、直感的に芸を見抜く才能があると思っていた彼女のことを信じて確認のために出かけました。
会場のお客はまばら。
当時は、落語がしぼんでいるころで、前半は、油無亭チャウチャウ、パリパリ昆布などというふざけた名前の漫才やコントが登場の後、トリを取ったのがこれまたどうかと思う「疎害亭寝愚僧」こと一之輔。
「みなさん、よくここまで残っていましたね、85点!」とお客をねぎらうばかりか客席に点数つけてやんの。
その口調が面白い。失礼な言葉を面白く聞かせられるってのは芸にセンスがある証拠。
この段階で掴まれた私は、こういう表現をする人が下手なわけがないよね、と思い、落語を聴けばまさに想像通りでありました。
学生とは思えないふてぶてしさ、落ち着き。
学生の分際で落語に呑まれていない感じ。実に頼もしい。
こんだけできりゃあ、まさか、落語家にならないなんてことはないだろうから、何年後かが楽しみなこった、と一人ほくそえんでいましたよ。
その後、春風亭一朝師匠に入門し、なんやかやありーので、あれから10年後、今ではこんな立派な真打ちに。
落語協会の一人真打ちだったので、披露興行は寄席50日間トリをつとめあげ、寄席以外では後援会主催、地元野田の落語会、そしていわゆる営業と呼ばれる業界が主催する真打記念落語会が続き、この秋で一段落したところ。
さて、ここから新たなスタートが始まります。
家では3人の子供の幼稚園送り、そしてTBS大沢悠里さんのラジオ番組を聴きながら洗濯物を畳む毎日。
そんな生活感あふれる落語は、伝統がもつ堅苦しさを感じさせず、けれど大事な間や調子は残しつつ、聴きよい落語を見せてくれます。
銀座の会は、新しいCD発売記念でもある会。
国立演芸場の披露口上を含め、「五人廻し」「あくび指南」「百川」が収録されたCDジャケットに一之輔はこう書いています。
「噺家はひとえに 
大海へ漕ぎ出す船乗り。
真打ち=船長だ。
俺は新米キャプテン1年目。
いざ、大荒れの海へ。
時々舵取りも間違えば
欠航もしちゃうよ。
先の長い旅だから
気にしない気にしない。」
今度の銀座博品館CD発売記念落語会3日間は、「宿屋の仇討ち」「富久」「居残り左平次」とネタ出しのほかに、ゲストに迎える、柳亭市馬師匠、柳家喜多八師匠、そして春風亭一朝師匠らに稽古をつけてもらった噺も1席あり。
いよいよ、落語の海へ帆をあげて漕ぎ出す晴れの3日間。
ぜひこのめでたい姿を目にしに、真打ちとしての本格高座を見届けに出かけませんか?
そこにはさわやかな風が吹き、あなたにきっと幸運の波が訪れること、保証いたします。
 
 
<誘っていーもん度(100点満点で)>
落語って聴いたことないの、一度連れてってくれる?おじいさんはイヤという彼女を 120
談志、志ん朝がよかったよなあ、今、若くてイキのいいのがいるのかい?と言う近所のおじさんを 100
落語会ばっかり行ってる、と文句しか言わないかみさんと御一緒に 80
人見知りだけど、なんか底に光ってるものがあるとにらんでる中学生を 70
夏休みどこへも連れてけなかった家族みんなを 60
 
2012/10/17~19「春風亭一之輔独演会/CD発売記念/一之輔、落語の海へ帆をあげて」
17日「宿屋の仇討ち」ほか。ゲスト:柳亭市馬
18日「冨久」ほか。ゲスト」柳家喜多八
19日「居残り左平次」ほか。ゲスト:春風亭一朝
※ネタ出しの他に、ゲストの師匠に稽古をつけてもらった演目予定
銀座博品館/19:00~/3500/03・5785・0380夢空間
だましだまされ、だまされだまし、
こうかと思えばああなって、そうかと思えばこうなって、
こんなはずじゃあなかったが、煙に巻かれて、夢さながらに、
ふてぶてしくも浮き世に居残り。
間抜けだったり、かっこよかったりの男達を一之輔流に描く三席三夜
 
 
2012年09月10日(月曜日)
(その3)「メルシー兄弟と従姉」年に一度の全国ツアー中!
 
虫の声は、夏の蝉に比べてなんて優しいんでしょう。
季節の鳴き方ってあるよね。
ヨッ、昆虫! 場を読むのがお上手。
というより、季節と場が先にあって、昆虫はそれにそぐうように後から生まれてきたわけだから、声が場に似合っているのはあたりまえなんだけど。
 
前回御紹介した「かもだる田公演/かもだる田バラエチー
花の精~再演+α~」。
以前、下北沢の小さな小屋で拝見しましたが、空間が違うだけで、こんなに印象が変わるとは。
浅草木馬亭という空間は人をゆるやかにしますね。
女性集団でありながら不思議なテイストの笑いで落とす、かもネギショット。
演劇の場で見ると、鋭角的に感じるのに、木馬亭では、だらりん感が漂い、花の精もふうわりやさしい風情。
シュールから気取り感が消えて、ごく普通に見えてくるから不思議です。
木馬亭の魔力、浅草の磁力。
そこへベタな笑いを得意とするコントユニットだるま食堂が加わって、くんずほぐれつ、独特な味わいを出していました。
ジャンルとジャンルがシャッフルされると、なにかしら新たなものが生まれます。
ええ、もちろん、花の精割引、晴雨兼用の花柄パラソルを持参して行きましたとも。
 
さて、今回、誘い合っていただきたいのは「メルシー兄弟と従姉」。
こんなタイトル言われても、わけわかりません、よね?
毎日新聞愛読者まいまい様方、ついて来てくださーい。
歌と演奏で楽しませてくれる男二人、女一人が年に一度組むかどうかという天の川トリオ。
 
 
「アニキ」と呼ばれ、まさしく兄貴な存在の山田晃士(やまだこうし、写真左)は、ポップでキッチュなガレージシャンソン歌手。
「オトウト」と呼ばれ、まさしく二人の兄貴と姉を慕いつつ、純情一途なロマンチック青年最鋭輝(もとき、写真右)は、今世紀、最初で最後のムーディスト。
「イトコ」と呼ばれ、兄弟とは慎重に一線を画し、おのが世界を追求、あやかしの海へ漕ぎ出し、もしかしたら帰ってこないかもしれない柴草玲(写真中央)は、花も恥じらう熟乙女シンガー。
このキャッチコピーでなにか掴めたでしょうか?
ますますわからない。。。。
 
あえて具体的なことを説明しないのは、言葉で定義した時点で、皆様の頭にちっぽけな世界を描かれるのが怖いから。
シャンソン歌手と言った時点で、ある定型が浮かんでしまう。
違う、そんなんじゃない、だからあえて「シャンソン歌手」の前に、普通なら結びつかない「ガレージ」をくっつける山田晃士さん。
モッキーこと最鋭輝さん、最後のムーディストと言われても、なにその人ナルシストなわけ?と頷かれてもちと困る。
実態は、GS(グループサウンズ)が好きな腰の低い好青年、と、ある一面を言ってはみても、またまた実像が遠のいていく。
柴草玲にいたっては、ピアノが上手、歌と歌の間にはさまるつぶやきもおかしいよ、ピナバウシュの舞台に感動してドイツのヴッパタールという村に単身で行っちゃったらしいよ、バレエもするよ、と言おうがそれで何がわかるでしょう。
 
こんな正体不明な3人が「メルシー」の一言に誘われて、罠にかかるように寄り集まった奇跡。
これを「さそもん」に書くそのわけは、ずばり“可笑し味”があるからなんです。
そっくり返っていても押し寄せるお笑いの笑いじゃなくて、お客が前のめりになってつまんできたくなる可笑し味。
与えられたのじゃない、自分で取りにいった分、痛快です。
 
そうそう、忘れてた、一番大事な事。
3人とも、歌と演奏、素晴らしいんですよ、そんなことは当たりきしゃりきの上で、可笑し味がある。
晃士兄貴が驚くほどの声量で詩を語り、モッキー(最鋭輝)が真面目に二人の間で笑いを誘い、玲さまが男二人をほっぽらかしてちぎれて闇へ。それをひきもどすのは兄貴の船で、漕ぐのは弟。
とにかく、出かけてみましょうよ。
音楽のジャンルからも、お笑いのジャンルからも、演芸のジャンルからも、離れたところですべてを含めてあちらの山の上でヤッホーです。海の底でハラショーです。
おもてなしとアートと漫画。
どうせ曲がった人生だ、見た事ないもん見ましょうよ。
テレビでは決して見られない、自分の足で、自分の銭で、自分の肌で、感じれば、山田兄貴がブラーボーと叫んでくれることでしょう。
いま、この原稿を書いてる最中、大阪のムジカジャポニカでは、大人のしのび笑いに包まれた3人が、ほくそえみ、祝杯をあげてるはず。
さあ、しのび笑いに出かけましょう。
 
 
<誘っていーもん度(100点満点で)>
クラシックでもロックでも音楽通らしい気配を漂わせてるおじさんを 100
テレビの笑いに飽きて、スポーツとニュースしか見なくなった彼を 80
いつもお弁当を見せ合ってランチしてるけど、もう一歩踏み込めない同僚を 60
共働きで週に一度は食事、というルールのディンクス夫婦を 75
一味違った川柳を詠んで独自の風流を極めたがってるおばさんを 50
 
<リンク>
・山田晃士
・最鋭輝
・柴草玲
 
●2012/9/13.木「メルシー兄弟と従姉」
20時~/山田晃士、最鋭輝、柴草玲/ いわき MUSIC & BAR QUEEN/前売り3000円、当日3500円(ドリンク別)/MUSIC & BAR QUEEN電話0246・21・4128
 
●2012/9/14.金「メルシー兄弟と従姉」
20時~/山田晃士、最鋭輝、柴草玲/米沢 Billy's Bar O.A.:未定/前売り2800円、当日3000円(1ドリンク付) /Billy's Bar 電話090・2603・5638
 
●2012/9/15.土「メルシー兄弟と従姉」
19時半~/山田晃士、最鋭輝、柴草玲/宇都宮 東口屋台村 Obbligato/前売り2800円、当日3000円 (ドリンク別)/obbligato電話028・636・8171
 
●2012/9/18.火「メルシー兄弟と従姉」
19時半~/山田晃士、最鋭輝、柴草玲/下北沢 440/前売り2800円、当日3000円/ (+2オーダー)/440 03・3422・9440(16時~)
 
 
2012年08月06日(月曜日)
(その2)浅草で、コントユニットだるま食堂3人が劇団と“花の精”(笑)に
 
 お暑うございます。
 前回お誘いした、下北沢「楽園」モロ師岡&楠美津香「夫婦別姓コレクションふたたび」、すごかったですねえ。
 決してテレビでは見られないライブでございました。
 スイッチを切れ、町へ出よう!と言いたい気分。
 心なしか、ご夫妻でお出かけになったお客様の率が高かったような気がしたのは私の錯覚でしょうか。
 2人の挨拶のあとに、いきなりモロさん、あのリストカット芸人ネタをもってくるなんて。
 こりゃ本気だと思いましたね。
 いわゆるほのぼの楽しませる営業ネタはたくさんあるのに、よりによってあのネタでスタートさせたのは、奥さんの美津香パワーに負けぬようにという意地があったのかなあ、なんて。
 
 美津香さんは、逆ストリップショーから軽井沢婦人ネタへ流れるように。
 婦人は、渋谷でふらふらしてる男子や女子に「働きな」と諭します。
 いきなり手旗信号を繰り出す日傘の婦人は、あっちの世界にいってるようだけれど、放つ言葉はまっとうで。
 迷いなく、堂々と押して演じきるからこそ、笑っていーもんかどーかと思いながらも笑ってしまう。
 二人コント、デュエットの歌も、しみじみぐっときました。
 モロさんにウォーリーを探せ柄の布でお守りの「袋」をチクチク縫ってあげる美津香さん、
 歌のサビは♪「住んでるのは池袋~」。
 二人をずっと見続けている常連さんは、笑いながらじんわり涙が出て来た、とも。
 またある方からはこんなメールもいただきました。
 「すごいものを見た気がします。とても怖い映画を見て、普段と違う場所に鳥肌が立ったことがありますが、いつもと違う、あるいはしばらく忘れていた“場所”から笑い声が出てきたような気がしました。  …<中略>…それにしても、何という夫婦でしょう。」
 
 
 さて、今回の誘っていーもんかどーかは、ジュクジュク熟女3人のだるま食堂さん御出演のバラエティショーのお誘いです。
 結成25周年になるコントユニットのだるま食堂は、姉妹2人+他人1人という構成。
 女性が四半世紀も同じメンバーでチームを続けること自体、普通ならあり得ない。
 さらにその上、面白さが減ってくどころかまます面白くなっている、これははっきり言って奇跡です。
 
 先日、横浜にぎわい座の地下「のげシャーレ」で見た「だるま食堂のコントで綴る歌謡ベストヒット」は、前もってお客様から「あなたの心の歌」を募集、歌にちなんだコントを披露していこうという企画でした。
 コントユニットと言いながら、心地いいハーモニーを聴かせてくれる歌も達者な3人です。
 胸とお尻を異様にでかくした衣装(?)で登場する「ボインボインショー」に始まって、ラストは、3分しか歌って踊れないアイドル「スリーミニッツ」に扮した3人が、フリルだらけのミニスカートで登場、かわいこぶってジャンプ、踊り歌う姿が大爆笑もの。
 三枚目を演じても、かわいそう感が出ないのがえらいとこ。
 自らを笑い飛ばせる自由を手に入れたらこんなに強いことはありません。
 ♪野田もオバマも「年下の男の子」、更年期障害から早く卒業したーい、なんて歌うアイドル、ありですか?
 
 さて、ここで質問です。
 まわりに他愛ないダジャレを言う女の人はいますか?
 おばさんギャグという呼び名はなく、おやじギャグが蔓延してるそのわけは、ダジャレという言葉遊びは主に男性脳がなせるワザだからでしょう。
 かけ離れた事象を似通った言葉で一気にひきつけて、その落差に笑うダジャレ。
 ダジャレにはその場をいったんゼロにする破棄力がある、と言ったのは、やはりダジャレ連発の文化人類学者山口昌男さんでした。
 
 女性3人だるま食堂コントはダジャレ満載。
 笑いが、日常を客観的に第三の目で見るからこそ生まれるものならば、笑いを作り演じる方々は、その第三の目を日常的に持っている人たち。
 本来なら女性が不得意であるところのダジャレを手中にできた3人だからこそ、自分たちを笑い飛ばせてユニットが長続きしたんじゃないかなあ、と類推する私。
 そんな3人が、今度は演劇畑の4人(かもねぎショット+多田慶子)と組んで、笑えるお芝居をいたします。
 そもそもは、だるま食堂も演劇出身だってことがこれを見れば納得。
 場所は浅草木馬亭。いつもは浪曲の小屋ですが、ちょっと入りづらいという方にはチャンスです。
 かつて、ここへ初めて入った有名な女性アナウンサーさんは言いました。
 「アジアみた~い!」
 そんな空間で、だるま食堂と演劇人が笑いのバラエティショーを開催します。
 夜の浅草はちょっと…という主婦の方へ、お昼の公演もあるのでぜひお出かけくださいませ。
 Twitter情報によると、やはり女性のスタッフさんが、台本読みの稽古場に潜入したところ、可笑しくて笑ってばかりだったそうです。うふふ、へへへ、わっはっは。
 第三の目を手に入れる魔法をみつけに行こうじゃありませんか。
 さあて、いったい誰を誘います?
 
<誘っていーもん度(100点満点で)>
そりゃもうわいわい女性の旅仲間で見に行けば、アフターに飲んで大騒ぎ。 120
いつも仏頂面のおっちゃん上司を誘えば、翌日から職場に活気 80
気まずくなってるお姑さんと浅草ツアー。観劇後は「あづま」の純レバ丼 70
あんまり笑った事ないという貴方!秘かに笑ってる人たちを観察してみるという手も 30
花柄のお洋服かバッグ持参で誘い合うと割引あり 100
 
<リンク>
だるま食堂
 
●第2回 かもだる田公演「かもだる田バラエチー 花の精~再演+α~」<第3回したまち演劇祭in台東>
浅草 木馬亭 http://mokubatei.art.coocan.jp/
8月23日(木)19時半 /24日(金)14時・19時半
   25日(土)14時・18時 /26日(日)14時
前売・当日 3,000円/小中高校生割引 2,800円
花の精割引・台東区民割引 2,800円
※花の精割引は、持ち物や服などに「お花」がある方への割引です。
 
 
2012年07月04日(水曜日)
(その1)開き直った底なし夫婦の共闘、これも笑いにするぜい!の心意気
 
 
 夏も真っ盛りに、暑苦しい夫婦がよりをもどして、二人で舞台に立ちます。
 
 思えば、はるか昔、二人から、結婚披露パーティーを六本木で開くという案内状をもらったものでした。なにかの事情で私は行けなかったのだけれど、その後、二人は高田文夫さんからすすめられた古い根津の一軒家に住まっていたのでした。冬ともなると隙間から冷たい風がいやおうなしに吹き込むと聞きました。
ひとりコント師が二人、一つの家に住むというのはどういうことか。
 
 男の方は、モロ師岡。
 しがない男、情けない男のコントが売りでした。
 
 定年になったお父さん、スーパーで食材をいかに安く仕入れるかに腐心する独り者、あらゆる方向から責められて鬱屈する教頭先生、手首を切るのも芸にする暗い芸人、などなど、状態を逐一言葉に出しては、追いつめられていく中年男のコントは、可笑しくも哀しく切なく。その朴訥な演技が認められ、喜劇俳優としてではなくマジな俳優としてお声がかかり、映画にテレビに貴重な脇役として仕事がくるようになった亭主。
 
 一方、二人組のいわゆるお笑いコントユニットを経て、1人で何をやり出したかと言うと、なんと格闘技系シェイクスピア、10年でシェイクスピアの全作品をやる!と宣言、その言葉通り去年やり終えたハードボイルドな女、楠美津香は、その妻。
 根津ギャラリーで、L.S.D.(ロンリーシェイクスピアドラマの略称、エルエスディー)を初めを見たときは、何をやろうとしてるのか全体像が掴(つか)めず、けど、御本人は何かを掴む端緒にいる、という事実だけはうっすらと感じ取れたのでした。
 なんだかわかりたい、と通ううち、人を誘ううち、舞台について話すうち、なんとなく輪郭が見えてきたものでした。そして確信した。これは事件だと。演劇人は、この、シェイクスピア作品に登場する人物をすべて1人でやりきるL.S.D.を見るべきだと。脚本をつくり、演出をし、自演する美津香L.S.D.スタイル。
 
 一方、夫は、背広姿で演じるサラリーマン落語なるものを始めた。扇子と手拭の代わりに、手帳とボールペンで、サラリーマンの世界を落語形式で描く。
 
 子供も産まれ、生育環境を整えるべく、数年後、三人家族は南千住へ転居した。夫婦が、別々の部屋で、携帯メールで連絡を取り合いながら反発しあい、1人の娘を媒介に暮らす南千住のマンションは静かに燃えていた、らしい。
 
 闘争の末、ここに二人は同じ舞台に立つ事を決心しました。二人の王国は、手に手をとらないと経済が成り立たなくなってきたのです。万やむをえず、共闘する男女の火花はどう散るか。
 
 かつて一度、新宿で二人が組んだ舞台を見た事があります。面白かったからまたやるのかと思ったら。終演後、お互い、相手をなじり合い、二人の溝は埋められぬほどに深くなったそうです。
 
 さて、今度はどうでしょう。具体的な目標がある分、大丈夫でしょうか。こんな険悪な二人が、身をさらけ出して笑う舞台をつくろうというのですから、見逃す手はないでしょう。
 
 さあて、いったい誰を誘います?
 
<誘っていーもん度(100点満点で)>
わりとうまくいってる夫婦は、うちの方がずっとうまくいってるわ、と優越感に浸れます。 100
そろそろぬるい関係になってきたご夫婦は、喝を入れるのにいいのではないでしょうか。 70
おつきあいしてる彼や彼女と出かけると、この先うまくいくかどうかが、確かめられるいいチャンス! 90
独身女子、男子は、共同生活の果てに得られる大人の馥郁(ふくいく)とした香りをかげることでしょう。 50
 
「モロ師岡&楠美津香 夫婦別姓コレクションふたたび」
期日 2012年7月30日(月) 昼の部 午後1時半開場 午後2時開演
                   夜の部 午後6時半開場 午後7時開演
場所 小劇場楽園(下北沢駅南口からすぐ 03・3466・0903)
料金 前売り2800円 当日3000円
予約、問い合わせ/楠一座座長
 メール( kusunokimitsuka@gmail.com ) か( moromoro_info@yahoo.co.jp
 
美津香ホームページから入って、ブログへジャンプ「スーパー美津香-HI」ブログは一見の価値有りのことよ。これを読んで舞台を見ると興味倍増ひしひし。
 
美津香さんのチラシ裏名文「夫婦別姓コレクションふたたび」を掲載しました。こちらもぜひ御覧ください。
 
 
2012年07月02日(月曜日)
ご挨拶
 ネットの皆様、初めまして。
 昔、まだネットがない頃、「笑っていーもんかどーか」、略称ワラモンという名のA3裏表フリーペーパーを発行していました。いろんなライブで配り歩いていました。
 
 漫才、落語、コント、浪曲、奇術、演劇、などなど笑いの舞台に立ったり座ったり(!)している方々のインタビュウを初めとして、舞台を見た感想を一般の方から葉書1枚でお寄せいただき、それらを掲載していました。
 
 毎号、編集しながら面白い体験でした。泣きよりも笑いは、受け取る側の触れ幅が広いので、一人で判断するのはまずいよな、と思ったのがきっかけでした。
 
 ピンとこなかった舞台も、そっかこういう視点で見ると面白いのかと新たなセンサーを手に入れもしました。
 「笑っていーもんかどーか」
 日常のいろんな局面でこのつぶやきが出ます。不謹慎かも、おふざけかも、躊躇(ちゅうちょ)しながらも笑わざるを得ない状況がございます。
 笑いは価値観の転轍器(てんてつき)。(転轍機は、鉄道で、車両を他の線路に移すために、線路の分かれ目に設けてある装置。ここはあえて器という字を使っています)
頭の中のものさしをぐいっと変える笑いの転轍器。
 
 たくさん持ってると生きるのが楽になる。
こりゃ、一人で楽になってるだけじゃなくて、人にもお裾(すそ)分けしなければね、と「誘っていーもんかどーか」始めます。
おいしいお店でも、素敵な美術館でも、好きな味噌やら、気に入った家電製品、なんでもおすすめするとき、おすすめしていーもんかどーか、躊躇しますよね。
 
 ことに笑いに関しては、その躊躇の深さが半端ない。ツボが違うともうこれっきりになるんじゃないかと臆病になる。「こんな人だとは思わなかった」と、せっかく今まで注意深くあたりさわりなく付き合って来た仲がぎくしゃくする。
 洋服なら、あれはあの人には似合うけど、私にはちょっとねえ、と割り切れるのに、笑いとなると人格全否定になる場合も。
 なんでだろ。
 生きて来た環境が違うんだから、違って当たり前だと思えばいいのにね。舞台アフターで、一緒センスで笑い合いつながり深めるのももちろん楽しいけれど、お互いにツボが違う同士で不思議を確認しあうのも面白いんじゃないかなあ、つーわけでコラムのタイトルを「誘っていーもんかどーか」にいたしました。
 
 お誘いリスクもなんのその、とは言え、最初はリスクを最小限にとどめるために、羅針盤代わりに始まり始まり~。
 
 
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もくじ
(その9)20年続く駄句駄句会句集「駄句だくさん」発売記念「寄席 だくだく亭」

(その8)松元ヒロ、たった一人で喋る、だけなのに。

(その7)今日も御機嫌運動、ハッチハッチェルバンド

(その6)今年もあります!「♪年忘れ市馬落語集」

(その5)いかにも東京!日替わりシャッフル笑いの大人ライブ「渦30」

(その4)春風亭一之輔の船出を、この目で

(その3)「メルシー兄弟と従姉」年に一度の全国ツアー中!

(その2)浅草で、コントユニットだるま食堂3人が劇団と“花の精”(笑)に

(その1)開き直った底なし夫婦の共闘、これも笑いにするぜい!の心意気

ご挨拶
 
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