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笑いの12段活用
あちこち原稿
 毎月最終水曜日毎日新聞夕刊掲載

刊笑いに生アクセス NO.51 2008/7/30.
毎日新聞夕刊掲載 ネット版

小林のり一と、てぶ子ちゃん!

ただひたすら可笑しい、小林のり一

 ひとしきり笑ったあとに、あれれ? 私、なんで笑ったんだっけ?と考える瞬間が好きだ。
しぐさか、論理のひっくり返しか、演者の特異な生き方か、あれやこれや分析しても答えが出ないとき、幸せ。
あるいは、子供の頃、お天気などとりとめのない会話をのどかに交わす近所のおばさんが羨ましかった。
屈託のない風景。
勢い込んで面白く作られたネタではなく、演者の発するなんでもが可笑しく思えるとき、かけがえのない時間が流れる。
暮らしに贅沢に溢れる風趣とでもいう感覚を味わわせてくれるのは、小林のり一。
ピンクのレイを首からかけて着物姿で登場、高座のまわりを踊るその形、普通じゃない。
とてつもなく奇妙ではありながら、目つきも動きも声も間も調子も本格である。
そらそうだ、父であるコメディアン三木のり平を間近で見続けて来たのだから。
「出」から「入り」まで不満なところがなにもない、と言ったのは立川談志だった。
紙袋から取り出された小さいノートを読みながら小咄のようなものを披露、「面白くない?じゃあ、これは? これ、よかったんだけどなあ」
全編無駄のようでいて、どこにも無駄がない。オチという陳腐な手法を凌駕している。
余計な間がない。そぎ落とされている。
折り返す地点、水分補給場所を的確に把握しているマラソン選手のようだ。
紙袋の中からまた一つ現れたのは、出た!てぶ子ちゃん。
手袋でつくられたぱっちりお目目のてぶ子ちゃんは、のり一の左手でなにやかやしゃべります。
なんじゃらほいなノンジャンル芸。
なにがどうというのじゃないけれど、ただひたすら可笑しい。腹筋、痛いよう。
「(こんな私と)皆さんはネ、この会が終わったらネ、別れられるからいいよネ、でも僕はネ、ずっと別れられないのネ。」
一生引き受けていかねばならぬ個性というものが芸を産む。
20年前に比べると、このすがれた芸に惹き付けられる人が増えて来た。
いいぞ、時代。
ヨタロー家族が空の星を物干竿で掴まえる落語の定番マクラから、さらにその先へ向かうのり一版「親子3人○○ガイ」は、すすんでるオツな小咄、必聴。笑いの踏み絵。
■可笑しさに浸る贅沢時間■
「渦19」シャッフル青渦8/8 ヨージ、THE GEESE、ナオユキ、
上野茂都、キン・シオタニ、坂本頼光
シャッフル赤渦8/10 寒空はだか、森はじめ、松元ヒロ、だるま食堂、
すわ親治、小林のり一
しもきた空間リバティ 03-5856-3200渦産業


 
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