●柳家喬太郎さん

パルコ劇場「ぼっちゃま」の稽古に向う直前にお話を伺いました。
この連載を始めたときからどこかで喬太郎さんにと思いながら、モノがなかなか思いつきませんでした。
ウルトラマンのフィギュアかしら、秘蔵の落語テープかしら、いつもかぶってる野球帽?はたまた大切な本が詰まった本棚?など思い悩んでいるうちに、この連載終了が決まり、そうとなれば、と集中して考えてたら「福家書店」が浮かびました。
壮大なモノ。
連載中一番大きなモノになりました。
楽しい連載でした。
人をモノを通して紹介するという仕掛けを思いついたのは
浪花の音曲漫才師「荒川キヨシ、小唄志津子」さんの阿呆陀羅経を聴いたときでした。
昔の阿呆陀羅経を復活させようと思ったきっかけはなんですか?と質問したのにキヨシ師匠は答えました。
「この木魚をみつけたときなんですわ」
小さい木魚、とってもいい音がポクポク鳴る木魚。
モノとの出会いが芸を紡ぎ出すことがあるということに気付きました。
「花王名人劇場」という番組にスタッフとして関わっていたころ、
今いくよくるよが、お腹を叩くギャグで一斉を風靡したことがありました。
ギャグとして前もって作っていたのかと思ったら
「あるとき、舞台で、ふとお腹を叩いてみたらえらい受けて、それからやわ」
不思議なものです、そんなふうに芸?が開花させられることもあるんですね。
もし今、今いくよくるよさんをこの連載で御紹介するなら、モノは「お腹」になったことでしょう。
まだまだ御紹介したい人とモノと芸はたくさんありますが、残念ながらここで打ち止め。
空間という壮大なモノと、御本人の思惑はどうあれ、現代の落語界を間違いなく背負って立つ柳家喬太郎さんが最後になったのも、なんかうなづけるな、と一人でほくそ笑んでおります。
「シアターガイド」2011年7月号


 
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