05/06/24 両国シアターX(カイ)
コメディオンザボード「−新装「役者の仕事」−花も嵐も旅芝居」
(原作・マルセ太郎、脚本・COB工房、演出・永井寛孝)
岡町高弥
座員に逃げられ座長と見習い二人きりになってしまった大衆演劇の花曇一座は解散寸前。
役者不足で幕が開かない。
なんとかその場を凌ごうと花曇座長(藤原常吉)は老人ホームにいってかつて役者だった近江フナ(矢野陽子)に助けを求める。
フナは老人ホームの芝居同好会のメンバーを引き連れ、素人ばかりの花曇一座が誕生する。
演出は喫茶店のマスター(永井寛孝)がかってでて、稽古に至るまではよかったが、なにせ相手は皆素人。
遅々として何も進まない。ここまでは、芝居のテンポも悪く見ているものも幕が開くのかとはらはらさせられる。
ところが、後半、大衆演劇の幕が開いてから芝居は一転する。
演目は、「花曇版・瞼の母」といったところか。
テンポも殺陣も軽快なら、17歳の娘に扮した矢野陽子も可憐、親分に扮した巴菁子も見事な悪ぶり、花曇座長の娘役に扮しての歌謡ショーもおひねりこそ飛ばなかったが、実に堂にいったもので、見ごたえのある大衆芝居の一座になっていた。
結局、花曇一座は解散を免れフナを加えた3人で新たな旅立ちを迎え幕となる。
役者は化けることが仕事とはよくいったものだが、化ける過程をおもしろおかしく見せるマルセ太郎の脚本とコメディオンザボードの役者たちのはじけぶりに感服させられた。
そこかしこに、マルセ太郎の薀蓄(上手、下手の意味、なぜ右側から正義の味方が登場するか)と役者論がちりばめられており、作品そのもがマルセ太郎の芝居観になっている。
一歩間違えば啓蒙くさい芝居を役者の遊び心が見事な芝居に作り変える。
なるほど、マルセ太郎の遺伝子は脈々と受け継がれているのだと安心する。
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