●2017/8/4.金 早稲田大学の演劇博物館
「テレビの見る夢、大テレビドラマ博覧会/お荷物小荷物」
岡町高弥
テレビドラマを回顧する野心的な企画。山田太一展に始まり、ドラマを作家プロデューサー主体に振り返る展示ですが、特筆すべきは伝説のドラマ「お荷物小荷物」の最終回が上映されていたことでした。「お荷物小荷物」は1970年に佐々木守脚本で18回放送された人気ドラマです。主演は当時マルチタレントで人気絶頂期の中山千夏。沖縄から出てきたお手伝いさんとして志村喬が家長の滝沢運送で働きます。滝沢運送は男尊女卑をモットーにした大日本帝国のような一家です。そこには、仁(じん、孝太郎の長男)河原崎長一郎、義(よし、孝太郎の次男)浜田光夫、礼(れい、孝太郎の三男)林隆三、智(とも、孝太郎の四男)渡辺篤史、信(しん、孝太郎の五男)佐々木剛が暮らしています。皆を手玉にとって捨てられた姉の復讐にやって来たわけですが、沖縄と日本の関係をパロディにしています。しかも、中山千夏になったり役になったり脱ドラマをやってのけます。
ラスト近く、朝日放送の正面玄関を出て大勢の観客に取り囲まれると突然、じゃあ続きをやろうとオープニングに逆戻り。続編はいきなり憲法9場が停止され徴兵制が復活。5人の息子は戦地に送られ、「沖縄は大丈夫かとか」叫びながらそれぞれ戦死します。
中山千夏は戦時下のため地味な姿で戦局を説明し、その映像を志村喬が見守ります。5人を弔いにきた中山千夏の前で全員がよみがえり、誰が好きだったか取り囲み、さらにセットは崩壊し裸のスタジオで皆が感想を言って、つまらないドラマを見るなと挑発して終わり。
なんとも前衛的なドラマに大手のスポンサーがしっかりついて視聴率も30%あったとか。
日本人は今よりも遥かに大人で賢かったことがわかる秀逸なドラマです。最終回以外残っていない幻の傑作です。なるほど、今の時代でもまだまだドラマの可能性はあるでしょうね。
それにしても中山千夏は魅力的でした。
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