●2017/7/18.火下北沢駅前劇場「トラッシュマスターズVOL.27/不埒」
岡町高弥
常に観客を挑発し激しい芝居を見せてくる中津留章仁率いるトラッシュマスターズVOL.27「不埒」を7月18日、下北沢駅前劇場で見ることができた。
思えば、2年前、衝撃的なトラッシュマスターズの芝居を見たのも駅前劇場だ。「不埒」もまた、今起きている社会問題を丸ごと抱え込んだ芝居だ。
東芝とおぼしき大会社の会社員桐山克己(カゴシマジロー)は家庭も省みない典型的な会社人間。その家庭は桐山の不倫もあって崩壊している。妻の瞳(川崎初夏)との関係も冷えきっていて精神を病んでしまう。息子の玲(倉貫匡弘)も父親に愛想を尽かしている。その仲を取り持とうと奔走する親友剱持(龍坐)。瞳の弟塚原(高橋洋介)と友人の教師藤井(星野卓誠)が現れマンション近くの駅再開発反対運動が持ち上がる。登場人物が揃った所で物語が爆発していくのが中津留芝居の醍醐味だ。会社をリストラされた桐山は家族社会問題に関心を持ち個人として真っ当であることに目覚める。過労のため脳出血に倒れ半身不随となった弟塚原や父親と近親相姦の関係にあった息子の恋人茅元(乙倉遥)に対してお前たちは何も悪くない、もっと誇りを持って生きよと励ます。
どんどんラディカルになっていく桐山は議員になって反対運動は先鋭化していく。そして桐山の前に現れた男はなんと誰あろうという展開で幕となる。
物語は破綻していてジェットコースターのような展開に疑問もわくが、そんなことはお構いなしに見せていく作者中津留の反骨精神がよい。なぜ、この国では個人の権利が尊重されないのか。なぜ、自己責任などという個人を追い詰める考えが生まれるのか。つまりは圧倒的な無関心と白痴がこの世の中を支配しているのではないかという怒り。
芝居から社会を変革しようではないかという熱いメッセージに拍手を送りたい。
闘う芝居、健在だ。
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